フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 26話
思わぬ訪問者たち
《ここまでのあらすじ》初めて読む方へ
普通の大学生だった桃子は、あることがきっかけでショーパブ「パテオ」でアルバイトをしている。野心に目覚めた桃子は少しずつ頭角を表し店の売れっ子へと上りつめていく。そんな中、ある晩の出来事はきっかけで桃子はチーフマネージャーのー佐々木に恋心を抱くようになる。そんな矢先、佐々木がカナという同僚のホステスと共に失踪したと聞き大きなショックを受ける桃子。やけ酒を飲み酔っ払って帰宅したアパートの前に、別れたはずの元恋人の拓也がたっていた。
「タックン…なんで、どうしたの」
ついさっき味わった恐怖で一気に酔いが覚めたものの
私の足取りと話す声は酔っ払いのそれだった。
「駅前でお前見かけてさ、心配になって」
「駅前?」
タクシーを降りた辺りだろうか。
「あのチンピラと一緒だったから声かけづらくて。
あ、 でも何にもしなかったわけじゃない。
見ててさ、 お前が嫌がってんの分かったから、もしあの男が無茶したら
警察呼ぼうとしてたんだ」
なるほどね…
チンピラと絡む気は、さらさらなかったってわけだ。
1人になるの見計らって声をかけてきたんだろう。
この人らしい。
拓也は何か言いたそうに私を見ていた。
1年ぶりに見る拓也は社会人になったせいか
前より少しだけ大人びた顔をしていた。
でも苦労を知らないお坊ちゃんオーラは健在だった。
彼の目にどう自分が映っているかは知っていた。
肌がむき出しになっている派手なキャミソールに
乱れた髪、剥げかかった化粧。
元カレとして、ツッコミどころ満載だろう。
彼の嫌いな尻軽アバズレという呼び名が
ピッタリの人間が今目の前に立っているのだから。
ああ、嫌だな…
よりによってこんな日に会うなんて
私の中には、まだ羞恥心が残っていたようだ。
いたたまれなくなり、俯きがちに言った。
「で… 何か用?」
拓也は弾かれたように
ハッとして
探るような目で私を見た。
「いや、この前由美に聞いたんだけどさ
なんかお前、学校全然行ってないらしいじゃん」
「ふうん…それで。心配でもしてくれた?」
私の素っ気ない口調に、拓也は戸惑った表情に変わる。
「だってさ、どうしたのかと思って。
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