友達が自殺未遂しました、たかが婚活で。〜後編〜

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出口に見えない真っ暗なトンネルを手探りで


歩くしかなかった


正しい方向がどっちなのかも分からないのに



婚活に悩む女性はよくこう話す。


今までの経歴も努力も関係ない。


肝心なのは今ここから、闇から、脱出することだけ。



その向こうには、必ず幸せな光景が広がっているはず。


そうすればやっと私は、前に進めるだろう…




奈々子は今まさに暗い闇の中で

迷子になっては、もがき続けていた。

何度も転びながら、やっとの思いで起き上がる


この虚しい繰り返し




今まで努力すれば、必ず報われてきた。


たかが結婚でこんなに苦しい思いしなきゃならないのか。


たかが婚活…なのに




当て所なく彷徨いながらも

はるか向こうに人々の幸福そうな笑い声を聞こえてくる。


女性や男性の笑い声からは、

誰かへの愛おしさや優しさが伝わってくる。


その声に混ざって、可愛らしい子供のキャッキャと

はしゃぐ笑い声が耳に届いてきた。



耳障りな…


奈々子は、その声を今、はっきりと 憎らしいと思った。






虚ろな目で満員電車に揺られていた。

電車が揺れるたびに背後のサラリーマンの肘が背中にあたる。


奈々子はイライラしていた。


その中年サラリーマンはどうやら本を読んでいるらしい。


なんでこんな満員電車で肘を伸ばせるの!?

信じらんない。


奈々子は、身長がないので人混みの中だと埋もれてしまう。

周りの人間にとっては存在感も薄いのかもしれない。

わずかに顔を向けてそのサラリーマンを見た。


なんてことない

髪の薄い枯れたおじさんだ。


奈々子は正面を向き直し、ひたすら我慢した。


しかし、男性の肘の先端は、さらに鋭利になり

奈々子の背中やうなじあたりをあたるのだ。


奈々子はだんだん、その男性がわざとやっている様に思えてきた。


もしかすると変な性癖の持ち主で

人に痛みを与えるのが快感なのかもしれない。


何かを突き立てられ侮辱されている気がしてきた。


もう一度振り向いて見ると

男の口元がわずかに微笑んでいる様にさえ見えてきた。

私に痛みを加え、興奮でもしているのか…



つい我慢できず、奈々子は言ってやった。



「もうやめてもらえませんか?

あなたのしていること、痴漢行為と変わらないですよ」


中年男は、最初自分に言われていると思わなかったらしいが

車内の空気と奈々子の鋭いの眼差しで


「は、はあ!?何言ってんだ、あんた。俺が何したって言うんだよ」



奈々子は、軽蔑を込めて言ってやった。



「それは自分が一番よくわかってるでしょ?」



周りの乗客たちがザワザワしだす。

何?何? 痴漢だってよお … マ、マジ!? どいつだよ!? 

ヒガイシャどこ?ダレ?


男は憤慨しながらも

周りの空気に耐えられなくなった様だ。


「ふ、ふざけんな、誰がアンタみたいな女にやるかってんだ」


男は逃げる様に電車を降りて雑踏に紛れていった。



ふん

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