②幼き日の傷が残したもの…
前話:
③幼き日の傷が残したもの…
次話:
幼き日の傷が残したもの…
物心ついた頃から、なんでだろう?
なんだか私はみんなと違う…
そう思う事がよくあった…。
保育園に預けられている頃から、園の行事に母があらわれる事は殆どなかった。
クリスマス会、お遊戯会、遠足、梨もぎ…いつも担任の先生が、母の代わりをしてくれた。
別に仕事を持っているわけでもない母だったが…。
小学校に上がって、突然の雨の日なども、昇降口には傘を持ったお母さん方が、待ち構えていたが、私にお迎えはなかった…
それでも毎回もしかしたら?…と私は必死に人混みを見回し、人影もまばらになった頃、諦めて走って帰った…
しずくを滴らせ、ブルブルと震える私を見て母は、レインコートを置いときなさい!と袋を出した。
元教師だったせいか、母はいつも命令口調で有無を言わせない感じだった。
ある日、レインコートを家に置いたままだった日、もの凄い土砂降りになり、さすがに今日は来てくれるかもしれない…
と、私はかすかな期待をしながら、長い事下駄箱の脇に立っていた…。
誰もすでにいなくなった校庭に、待ちわびた人影はあらわれる事なかった…
寒さと、悲しさにカチコチになっている身体を奮い起たせ、私は走り出した…。
必死に誰にも見られないように走った…。
すると雨にけむる中、
『ど~したの~?お母さんは?入って行きなさい~』
目をこらすと、近所のおばちゃんだった…。
私は返事もせず、また走った…
ずぶ濡れの姿を見られた恥ずかしさと、ひとりの悲しさに、逃げた…。
その頃から、なんだか私は人と違う…と感じでいた。そんな中思い出すとこんな私でも、未だに身体の中に微かに痛みに近いものが走る情景が…。
小学3年の運動会だったと思う…
昼休みになり、皆それぞれ応援に来た家族と、ビニールシートを引いてお弁当を広げているのだが…
いくらグルグルとトラックをの周りを回っても、私の家族が見つからないのだ…
廻りは楽しげに家族とお弁当を広げている…
何かあって遅れているのかも?…
と思った私は迎えに出るつもりで、ゆっくり家の方向へと歩き出した。
途中できっと会うだろう~と…
道に目をこらしながら、ゆっ~くり歩いた…。
でも、家族には結局行きあわず、とうとう家まで着いてしまった…そして家に入ると…
・・・
何事もないように、父、母、妹が素麺をすすっていた…。
続く…
あなたの親御さんの人生を雑誌にしませんか?
著者の稲葉 薫さんにメッセージを送る
メッセージを送る
著者の方だけが読めます