僕が精神科に入院するまでのほんとうのこと~入院顛末記~(10)

著者: くぅも晴れるや

おいらは意識が戻った
臭い服を脱ぎ
新しい服に着替えようとしたが
整理してしまって服がない
裸のままになった
おいらはそのまま
なぜか元妻の部屋に向かった
元妻の部屋に裸のまま向かった
何も危害を加えないというしるしだ
そして覚悟はあるのかも確認した
元妻の部屋のベルを鳴らした
裸のままの姿でだ
元妻は出なかった
出てくるわけがない
いないのだ
その日彼女はイセエビを食べに外食していたのだ
裸のままマンションを歩き
自分の部屋に戻ろうとエレベーターに乗った
するとエレベーターが止まった
閉じ込められたとあわてる自分
裸のままうずくまった
しばらくしてもう一度ボタンを押した
動いた
なぜか家主のいる階を押していた
マンションがおかしいことを問いただしたいのか
おいらには明確な意図はなかった
ただ何か因果のようなものをときたかった
家主のいる階についた
玄関には通常の鍵しかついていないはずだった
家主の部屋も前に見たときはそうだった
しかしそのときだけは暗証キーの鍵もついていた
完全におかしかった
この家主完全におかしいと思った
玄関の前でうずくまり倒れた
何なんだこのマンションは
おいらは裸のまま倒れた
どうにでもなれという気持ちになった
警察がなぜか大勢現れた
誰が通報したのかわからない
そのときまたしても痙攣が襲ってきた
無数の銃弾を打ち込まれたのだ
痙攣が起きて痛い
警察はおいらを抱え上げ
パトカーに乗せて
警察署の留置場に入れた
深夜だった
警察署の留置場でしばらく裸に毛布のまま
壁を見ていた
しばらくしてまたしても痙攣が始まった
痙攣が始まってとまらない
おいらはそのまま意識を失った
次に目が覚めた瞬間
おいらは救急車の中にいた
双子の隊員がいた
妄想が頭をよぎった
警察はみんな同じ顔になったのか?
心配ないと隊員は動作で示した
おいらはしばらく様子を見ていた
そのまま病院に搬送された
焼却塔が見えた
おいらはそこに埋められると思った
病院の隔離室に入れられた
扉は中から開かない
深夜に病院に入れられ
そして意識を失った
おいらは隔離された
隔離されたのがなんだか葬られたように
感じられた
このまま生きたまま埋葬されると感じた
意識が失われた
意識が失っている間
その意識を失う瞬間に
死を意識して死んだと感じていた
何度も死んで
何度も生き返るのだ
意識を失った
隔離室に入れられた翌日診察があったのだろう
意識がほとんどない状態で
何か質問を受けているような感じがした
そのとき両親が来ている感じもした
おいらはほとんど意識がなく
何を話しているのかもわからない
気がついたかなぁと思ったら部屋に入れられるまえ
自分もこの人のようになっていたかもしれない
罪と罰ですといいながら部屋に入れられる
部屋の扉のところに罪と罰と削られている
意識を戻した時には
隔離室の中で書類があった
40代男性氏名不詳
隔離処分にするという書類と
書類に措置入院とするというもの
牢屋のような鉄格子の模様を眺めながら
何か妄想が起きている
小さい四角い光が現れ
その中にテレビのように映像が見える
外国の王室の結婚式のようだ
次にアスキーアートで画像が流れる
おめでとうとあらわしているようだ
食事を扉を開けずに差し入れる口のところが
何かおかしいのに気がついていじりだす
差し入れ口の開閉工を上まで押し上げる
窓のガラスには目隠しに紙が貼られている
やたら宝くじの音楽が流れている
誰かが当たるわけないやんと叫んでいる
その年はオリンピックの年だった
ちょうどオリンピックの始まるころに入院している
柔道の結果を看護師さんが伝える
このオリンピックは柔道の結果が最低だった
看護師さんが私の部屋に来て注射のような格好をしている
何の注射だろう
気がついたときには拘束されていた
おいらは意識を保とうとした
目が開かないのだけどそのあいだも意識を保とうとした
医者はこの間のおいらは血だらけになり
何日も眠りこけていたという
おいらは意識を保とうとしていたから
眠っても寝ていない状態だった
拘束の解けるのは知っていたが忘れていた
解くこと自体がもうつらくてしんどいのだ
看護師さんが足に数字を書いている
点滴がうたれる
おいらは意識を保とうとした
意識を保とうとしても妄想が襲ってくる
どうにか拘束をとろうとするが
解き方を忘れぐるぐるになる
おいらは何をしていたのだろう
排便がしたくなって看護師が来たときに
排便がしたいというとおまるが用意され
そして拘束が解けた
おいらは便器で頭を洗ったのを覚えている
頭がやけに暑かったので便器の水を流したのだ
眠りこけてある日
隔離が解けて
顔を洗いに洗面台に向かう
目がまぶしさのあまりに開かない
それでも見えている
自分の顔が見れないのだ
景色は見えているのだ
自分の顔が見れないのだ
隔離が解けて朝だけ顔を洗いに
みんなのいる部屋に行くことを許される
それが2日間だった
そして隔離室から
保護室に移動する
保護室に移動しても
7時くらいから12時くらいまでしか
みんなのいる部屋にいることは許されなかった
保護室の隣の部屋は四六時中独り言を言っている
静かにするようにお願いするが
ぜんぜん聞き入れずに独り言を繰り返して言る
おいらにこのとき悟りのようなものが現れた
悟りのあとに死神にとり憑かれたのを思い出し
悟るもんじゃないと言い聞かせ
悟りがきても忘れようとした
疲れている体は容易に悟りの現象を忘れさせた
朝早くおきて二重扉の窓から外の景色を見る
誰かが自由に動いている
おいらは時間がくるまで動けない
静かにおとなしく待つしかない
妄想が穏やかに消えていく
現実の認識ができてくる
おいらは入院しているのだ
自由な処遇になるまで
Z4からZ1まで段階があり
その段階を経過して自由になるらしい
なぜZなのかはわからない
もう終わりという意味なのだろうか?
入院していると認識したとき
悟りの現象を忘れようとしたときに
幻聴がこういった
どのみちこいつはよくなっていくねんなぁ
どういうことだろうか・・・
隔離室は6部屋あり
保護室もどきが何部屋かあり
男女合計で20名程度しかいない病棟だ
大部屋は2部屋あり
大部屋にきて始めて自由の階段を踏める
入院しているものの中には
覚せい剤中毒患者やいろいろの中毒患者
そして精神の病気の患者などがいる
やくざの人もいれば青年もいるし
聾唖者だっている
そんな病院だった

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