おかねがもったいない!!

著者: さわ かずこ

 世の中には世間からは見えない、わからない虐待があります。

 自分語りしていいという企画なので「お言葉に甘えて自分を語ろう」と思いました。

 私の話は目に見えない虐待です。関わらなければ、誰かが気づいて助けの手を差し伸べねば、気づかない虐待が世の中には、ごまんとあるのです。

 「近所に住むあの子の体臭がひどい」

 もしかしたら、その子は、風呂嫌いなのではなく、ただ虐待を受けてるだけかもしれませんよ

 「くっせえ!!」

 「近寄るなばい菌!!」

 私が一人でお風呂に入れるまで、周りに言われた言葉です。

 その後、一人でお風呂に入れるようになっても、異臭が発生すると、教師も、児童も、私に目がいきました。一度植えつけられたイメージは、そう簡単には払拭できないのです。

そして、正直で残酷な子供という生き物は率直に言います

 「お前くさいぞ」

 私を虐待し続けた母親は、自分が我が子を虐待していたという自覚はありません。通常、虐待というものは、加害者いわく「しつけのためにやった」と言います。虐待する側は、自分が大好きだし、自分が正しいと思っているので、説得しても「暖簾に腕押し」です。

 私の母は今でもこう言います

 「お金がもったいない」

 母は、そういって、病的なまでに私の金の使い方を、ひたすら監視し続けたのです

 お金がもったいないから、水道と電気とガスを節約する。

だから「お風呂に入るな、シャワーも浴びるな」と言って一週間に一度しか入浴させてもらえませんでした

 私は母親のせいで「不潔な子供」と学校や近所で有名になりました。

 おかげで友達もできなかったし、親御さんからは「頭のおかしい母親と娘」と影で言われてました。こんなこと言われてるんだよと訴えても、母親はこう言います

 「私は人間が嫌いだから、わざと嫌われる真似をしているんだ」

 嫌われる勇気と嫌がらせは別物だし、自分が嫌われるのは勝手だが、子供まで巻き込まないでほしい。

 私は母親に逆らって入浴をするようになっても、近所や周囲の偏見の目が怖くて、学校は不登校、いわゆる「引きこもり」になりました。母親は、我が子の将来など心配しませんでした。彼女にとって、子供は自分の言うことに従っていればいいという存在だったのです。そこには自分のエゴしかなく、私は引きこもって、ずっとこう思いつづけました

 「おかあさんがこわい、あたまがおかしい」

 私は18になった後に、自ら外部に助けを求めました。

 自治体の引きこもり支援グループに参加して、私はなぜ引きこもったのかという境遇を、支援員に話すと、年老いた支援員の人にこう言われました

 「ずっと我慢していたのね」

 話を聞く側としては、そうとしか言いようがないのに、その言葉を受けて、私は赤ん坊に返ったように大泣きしました。

 そして今は、母親から離れて、人生のやり直しをしています

失った時間は大きいし、取り返せないものもある。でも、それに嘆いても時間は返ってこない。私は大人になれて良かったと思います。子供のままだったら、ずっと母親という底なし沼に溺れていたからです。今も母親の顔が頭に浮かぶと、パニック発作まではいきませんが、胃液がこみ上げたり、息が苦しくなります

 子供は成人したら、自立しないとダメだし、親は親で子離れしなければいけません。私は健全な親子間のために自立を薦めてます

 私のように、目には見えない虐待を受ける子供が一人でもいなくなることを願わずにはいられません

 これにて「自分語り」おしまい

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