35年間いつも側にいてくれた人と別れたいと思った理由【3】おバカ夫婦時代

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不倫をして、自分を裏切った相手と、何故か強引な『タイミング』に流され、結婚してしまった私。


私には、式に呼べるような家族もいなかったし、お金もなかったので、結婚式は挙げずに、入籍だけした。


ヒロの両親に、改めて結婚の挨拶をして、結局、私の安アパートで、そのまま二人の生活を再開した。


元々、ヒロは体育会系で、私は文化系だったから、二人の共通の趣味とか、ほとんどなくて、なんで、この二人が、こんなに長く付き合っているのか、本当によくわからない。


付き合い始めの頃は、唯一、二人の共通の趣味である、映画鑑賞をよくしていた。


デートの度に、飽きもせず、多い時は、2本の映画をハシゴして観た。

その頃の、パンフレットが、今でも、みかん箱にぎっしり、2箱とってある。


入籍して、夫婦となってからも、休みの日に、映画を観ることはあった。


あの日も、映画が始まる迄の空き時間で、ヒロがパチンコ屋さんの前で、ふと、立ち止まった。

「時間つぶしに、ちょっとだけやってみようよ。」

と、誘われて、私は初めてだったので、言われるのがままに、ついて行った。


道路側の席に、二人で並んで座り、ヒロに教えてもらうと、最初の300円位で、私に単発の当たりがきてしまった。

当時は、当たりの演出も、今よりずっとシンプルだったけど、それでも、初めての経験だったので、ちょっと興奮した。


「当たった後、またすぐ当たる事あるから、もう少し、その台やってみれば?」

と、言われ、続けて打ってみたら、程なくして、また当たった。


私が当たっている間に、ヒロも位置を1つ隣にずれたら、1000円位で当たりをひいていた。


その日、二人でほんの20分位で、単発が3回当たり、結果、一万円プラスとなり、映画代は、軽くチャラになった。


これが、私とパチンコとの出会いであり、その後の人生を、大きく左右する、出来事でもあった。


ヒロは、私が嫌がらずに、パチンコ屋さんについて行った事に、気を良くして、一週間もしないうちに、また私をパチンコ屋さんに誘った。


2度目の時は、確変を引いてしまい、その日で、どっぷりパチンコの魔力に、取り憑かれてしまった。


それからは、ヒロと二人で、ちょくちょくパチンコ屋さんに通うようになり、映画館からは、すっかり足が遠のいた。


ヒロは、二人で共通の事柄に、熱中出来る事が、嬉しいようだった。


だが、そのうち私は、一人でも、パチンコ屋さんに通うようになっていた。


慣れとは恐ろしいもので、店員さんや、常連さんに、顔を覚えられる様になる頃には、あまり周囲の目も、気にならなくなっていた。


真面目に仕事はしていた。


しかし、勤務時間が終わると、足早にホールへ向かう日が続いた。


ホールに足を踏み入れるまでは、恥ずかしさやら、罪悪感やらを感じているのだが、一歩、中に入ってしまえば、

(昨日は、あの台に何万も入ってるから、今日は出るだろう。)とか、

(昨日の後半から出始めた台は、きっと、今日も好調だろう。)とか、

そんな事を考えながら、お気に入りの台を打つ。


もちろん、すぐに出る時ばかりじゃないけど、予想通りに、確変連チャンなど引いてしまうと、ドーパミン出まくりで、楽しくて仕方ない。


今は見られなくなった風景だけど、自分の席の周りを、ドル箱で囲まれる優越感は、一度味わってしまうと、何度でも求めてしまう。


そんな感じで、結婚してからしばらくは、バカ夫婦二人で、パチンコ屋さんに、足繁く通っていた。

ひどい時には、帰りの交通費まで無くなり、ヒロと二人で、寒空の下、1時間歩いて帰る。なんて日も、しょっちゅうだった。


後半は、もうほとんど病気だった。


夫婦でハマっていたものだから、食事も近所のラーメン屋さんや、お蕎麦屋さんで済ませる事が多かったが、二人で納得してたので、それで問題なかった。


たまに、強烈な罪悪感に襲われて、パチンコ以外の遊びをしようとするのだが、結局、二人の趣味嗜好が揃わず、気がつけばいつも、二人でホールに行き、そろそろあの台が出そうだ!とか、99%当たるリーチに外された!とか、そんな内容の会話が弾んでいた。


そんな生活を、3〜4年続けて、気づけば、二人で100万円ほど、生活費として、借金していた。


私が、そろそろ三十路を迎える頃に、長男であるヒロに、両親が同居を願い出た。


二人共、介護が必要な状態だったので、嫌とは言えず、渋々、ヒロの実家での、同居生活が始まった。


これを機に、私は毎日のパチンコ三昧から、足を洗う事が出来るようになるのだが、また、新たな問題が、私達の前に立ちはだかり、ヒロは完全に、パチンコ依存性となってしまうのであった。



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