フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第36話
勝者と敗者
《ここまでのあらすじ》初めて読む方へ
あることがきっかけでショーパブ「パテオ」でアルバイトをしている大学生の桃子は、少しずつ頭角を表し店のナンバーワンを目指していた。ところが恋心を抱いていた佐々木が突然店を辞め、店を取り仕切る立場の玲子に裏切られていたことを知る。ついにナンバーワンの座を手にした桃子はオーナーの川崎に取り入り、強い復讐心と、完全なる頂点に立つため玲子をパテオから追い出す。
女王様のようにスタッフ達を意のままに仕切るようになる。ところが、早くもナンバーワンの座はミユという若いホステスに奪われそうになっていた。焦りと不安が桃子を追い詰め、店では傍若無人さで評判を落とし、彼女は過食嘔吐に陥っていた。そしてあの悪夢が…いよいよ次回最終回!
正夢って本当にあるんだ
今まであの夢に苦しめられてきたのは
この夜のことを警告か暗示していたのかもしれない
予知夢だったんだ…
私はされるがままだった。
頭の中は驚くほど冷静に色んなことを思った。
実際はたった一瞬だったに違いない
私は、微笑みさえ浮かべていた
もうこれ以上落ちる(堕ちる)ことはないだろう…と
当時のパテオでの、私の傍若無人ぶりは
店の外にも伝わっていたらしい。
パテオのナンバーワンの杏ってヤバイらしい…
実際に私は、感情に任せては店の経営にまで口を挟み
ホステスやボーイの態度が気に入らないと
即刻クビにした。
パテオの中は私に刃向かう古株のホステスはいなくなり
新しい若いホステスが入れ替わり立ち代わりだった。
私はしたい放題の女王様気取りだったわけじゃない。
私は必死だった。
私を陥れた玲子を見返したかった。
もっともっとパテオを盛り上げたかった。
私は盲目だった。
良いと思ってしていることが裏目に出る。
いくら努力と権力を駆使しても知識と経験の浅さを
補うことができない。
自分自身の人気だって維持しなくてはならない。
2番手だったミユは私の指名数を超えてくる日も少なくなかった。
ミユに脅威を感じて出してから
私は彼女の表情や振る舞い1つ1つが癇に障った。
ボーイ達に密かに天使と呼ばれているミユ…
ライトに照らされるその顔が勝ち誇ったようにさえ見える。
なんて、綺麗な肌だろう…
なんという透明感と初々しさだろう…
私よりも3歳若いだけなのに
彼女の存在を側で感じるだけで
随分と自分が歳をとったように感じさせるのだ。
今なら、かつて私に醜い嫌味や嫌がらせを浴びせたお局ホステスへ
同情の憐れみすら感じることができる。
当時、自覚がなかったが
私は過食嘔吐症だった。
前は、店から戻るとすぐシャワーを浴びベッドに入ったのに
今は帰宅するなり買ってきたジャンクフードを手当たり次第
一気に食べ続ける。
食べている間は、不安も恐れも忘れることができた。
ずっとダイエットしてきた反動もあったかもしれない。
もう1人の私の嫌悪と軽蔑の眼差しを感じながら
私は食べ続けることをやめられなかった。
そして、全てを食べきると
タワーマンションの最上階から飛び降りたくなるほどの
後悔の念が押し寄せてくる。
私は慌ただしく、トイレに駆けていき
胃の中の全てを、まるで毒素を排出するかのように
吐き出すのだった。
その繰り返しだ。
まるで地獄にいるような気分だった。
吐き出す時はいつも決まって涙も溢れた
なんで… なの?
私は、ナンバーワンになりたかっただけなのに…
やっとなれたはずなのに…
お金はいくらでもあるし、店ではみんなが私に従う
なのに…どうして?どうして、こんなに
満たされないの?
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