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横須賀の若き経営者たちへ――仲間の大切さを知る男が伝えたいこと


地域の中小企業は、町とつながり、街に貢献する事で幸せになる。だからこそ幸せを共有し、苦難を乗り越える仲間を作る礎が必要だ。それが「横須賀青年八日会」。若手経営者が集って自らを向上させる場所である。2017年、8年間の月日を共にすごしてきた経営者のひとり、飯野茂が会を去る。しかし彼の想いは、地域の若手へと受け継がれていくーー。



【八日会の未来へ馳せる思い】

「横須賀青年八日会」。地域の若者が「切磋琢磨」をスローガンに月1度集まり、地域で活躍する後輩を育て、共に成長する会だ(以下、八日会)。そのうちのひとりである飯野茂は、2017年が会に加わる最後の年と決めている。

「八日会の仲間のためには、自分が成せることをとことんし尽くそう」――入会したときに決めたことを守り抜く、最後の1年。全力で、自分が知った大切なことを、決して押し付けず、静かに熱く伝える。飯野には、地域の未来を担う若手経営者たちに伝えたい想いがある。




【飯野茂の大切にしていること。それは『仲間』】

娘が骨を折った。根性がある子でよかった。あきらめずに一生懸命やる娘でよかった。そんな風に家族のことを語る彼には、ふたりの子どもがいる。

仕事は、建設業。地域のインフラである道路や、交通安全施設道路標識などの製作設置に携わる。

仕事で一番大切なのは、「工期を守ること」。天候に左右される仕事であるため、決められた中でしっかりと整えていくことの大切さを知らないといけない。そこには必ず人の力が必要になる。

準備八割、そこで仕事のすべてが決まる。彼の八日会での活動ぶりからも、「いつもそうして仕事に取り組んでいるんだろうな」という姿勢が垣間見えることがある。

八日会で、飯野は2016年度の事務局長を務めた。八日会の事務局会は、新しい会員が仲間を作る場所。でもそこに入ってこないメンバーもいる。それをあきらめる人もいたかもしれない。でも飯野は違った。

空いてる日を聞き、調整した。仲間のいる彼だからできること。そして、仲間の大切さを教えたい相手だからこそ、あの手この手を尽くして、絶対にやり遂げる。

仲間が助けが必要だとあれば、どんなことがあっても助ける。自分の持つ人脈を駆使し、やり遂げる。その姿を見せることで、仲間の大切さを教える。

なんでも一生懸命やらなきゃ気がすまない性分。皆でやるときは一生懸命やる。

派手なイメージがあるけれど、実は大切なことをコツコツと準備し、決して扇動せず、静かに熱く事を成す。背中を見せることで、人に伝えていくのが飯野流だ。



【拒絶という経験を経て、仲間の意味を知る】

しかし8年前、飯野茂との八日会との関係は、実は「拒絶」からはじまった。


「俺だけ入会できなかった。しかも、何度も……」。実際に、半年近く入会ができない状態が続いた。

地域のしがらみーー。異なる意見や立場を許容できない人との溝だった。色が出るから入れられない。そこには見えない壁があった。そして入会後にも、それは付いて回った。


「これからはそういった立場を超えて親睦を深めよう」と例会で言われたことがあった。しかし、飯野に対する「拒絶」はまだ消えることなく、存在していた。


立場を超えて親睦を深めようと言ったのに、親睦とは名ばかりで一向に共に過ごす時間がなかった。そればかりではなく、異なる立場ごとに分かれて例会に取り組むこともあった。例会の後も各々帰宅するように見せかけて、食事をするなんて子供じみたことまでも実際に起きた。


溝が広がるから入れないと言い、拒絶をした八日会。溝をこれからは埋めようなんて言葉は、上辺だけだった。何しにきているんだろうと心底思った。悔しかった。


次に続く後輩に同じ思いはさせたくない。違いを認め、励ましあう。そんな切磋琢磨の姿に憧れて、八日会に入会を希望した。先輩の姿に追いつきたくて入会をしたかった。だからこそ八日会の溝を埋めようと決意した。そんな溝、俺が来月にはなくしてやる。だから、入会後、時間が経っていなかったけれど、信念を曲げずに思いを伝えた。


「溝を深く作ってるのは自分たちではないか。自らも溝を浅くする努力をしないと溝なんて埋まらない」。入会したばかりの飯野は、それを相手にちゃんと伝えた。


そうすると、ようやく翌月から少しずつ融解しはじめた。今では、仲間の大切さを教えてくれた大切な思い出。しっかり立ち向かい、思いを伝えたことで仲間ができた。


飯野の入会時に存在した溝は消えた。しかし、その後も後輩が入会するたびに、溝は大なり小なり現れる。職業、政治、経歴……見渡せば溝や違いは存在し、違いを受け入れられない人が必ず存在する。


溝を埋める少しの勇気が人には足りないだけだ。「なぜ?」と聞く勇気が出なかったり、知らなさゆえ、抱く恐れが人の溝を作る。一歩踏み出し、しっかり話せば必ず人は分かり合える。対峙する勇気さえあれば、人は乗り越え、仲間ができる。


だからこそ、溝を埋める役割が必要だ。先輩・後輩の溝。新入会員と既存の会員の溝。自分にできることは、そこをつなぐこと。その準備とつなぐことを全力でやる。


自分から話しかけて一生懸命がんばる。声をかけて「一緒にやろうよ」って言い続けた。そうするうちに、自分から手を挙げる人が出てできた。そしてそこに自分の喜びがあった。


一生懸命やったら楽しくなることを知っている。一生懸命立ち向かえば、必ず解決することを知っている。その先に、仲間がいることを知っている。だから、みんなが一生懸命できる環境を作る。


飯野にとって、八日会で周囲から認めてもらったことが自分の財産になった。

だからこそ、仕事でも家族でもないところでみんなが認めてもらえる環境を作ってあげることで、八日会に何かを残したいと思っている。




【八日会にとっての飯野茂】

八日会にとっても、飯野は人と人をつないでくれる大切な人になった。理想へ妥協せず追求する背中を、そっと見せてくれる人。導いてくれる人。動き出したばかりの未熟な経営者の成長過程を、そっと見守ってくれる存在。

八日会は、ビジネスマッチングをする会ではない。地域貢献を目指しているわけでもない。よく目的がわからないと言われることもある。設立時から若い経営者が仲間になり、一緒に勉強して自分で向上させる会だった。

もっと立派な経営者になる。そしてビジネスを繁栄させる。立派な経営者になり、その上で、地域に貢献するための場所である。

「初心忘れるべからず」と飯野は語る。楽しさを忘れちゃダメだよ。最初に入りたいと思った気持ちを忘れたらダメだ。楽しくなくちゃ続かない。

子どもの頃、公園でやっていた野球の楽しさを忘れないように、楽しい経験をたくさん積んで、楽しさを忘れない、楽しさを共有する仲間の強さを知ってほしい。わくわくすることを考えていかなきゃいけない。

屋根に穴が空いた……水漏れした……どんな小さなことも大きなことも、八日会の仲間がいれば何でもできる。焼き鳥一本で相談に乗ってくれるような仲間が横須賀にはいる。そういう仲間がいたら本当に心強いし、いたから乗り越えられたこともたくさんある。後輩たちには、そんな仲間を作ってワクワクする時間を過ごして欲しい。仲間の大切さを学んで事業に活かして欲しい。

八日会には、入会から5年を経過し、40歳以上の会員には卒業資格がある。もちろん飯野も卒業資格をとうに有している。しかし、同期や年下の経営者の卒業も飯野は見守り続け、八日会に今までは残っていた。

2017年を最後の1年と決めたことには理由がある。飯野には尊敬するひとりの先輩がいる。八日会への入会を志した理由でもある先輩であり、仕事に対する情熱、街に対する思い、仲間に対する気持ち、共に何かしたくなってしまう人柄、巻き込む力、影響力…たくさんのことを学ばせてもらった先輩だ。

その先輩の思いを、次の世代へ思いを伝えたいとずっと願ってきた。彼の思いが街を変える原動力になることを知っているから。その先輩が、八日会の顧問を2016年に就任してくれた。だから、安心して卒業できる。最後にその不器用な先輩と若者をつなぐ架け橋となり、卒業すると決めている。

すべてのことには終わりがある。だからこそ、飯野は卒業を決めた。八日会の溝をうめ、架け橋になる役割を終え、次は飯野自身が挑戦する舞台に立つ。

飯野はいつもメンバーに言う。「そいつを気遣ってやることが大切なんだ」と。

厳しいけど、メチャクチャ優しい。いつも見ていてくれる安心感がある。だから頼ってしまう。これからはその魂を受け継いで胸に、各々が成長していく番だ。私たちにはまだもう少し、この人から吸収させてもらえる時間が残されている。

飯野にとって2017年は、「横須賀青年八日会」最後の1年だ。私たちは、彼と共に過ごす時間から、全力で学ぼう。




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井上 芙美

私も所属する横須賀青年八日会。大好きな先輩へ、横須賀青年八日会への思いと半生をインタビュー。

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