独立系?組合、ユニオンと遭遇して その1

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著者: Tachibana Toshiyuki

新聞上で時々、目にする外資系企業の首斬りに対するxxユニオン。ユニオン=組合なのだけれど、ひょんな事からこの人達と3ヶ月に亘ってお付き合いする事に。

日本の大企業だと大抵企業内組合やら産業別組合なるものがあって大部分の人が管理職になるまでは組合員として加入している事が多い。

そもそも資本家に対する労働者の権利を守る為に労働者が集まって組合を作って(団結権)、労働者の代表として経営者と交渉する(団体交渉権)は憲法で認められている権利だけれど、日本の経営者の大部分がサラリーマン上がりである日本にあっては仲間内の季節行事の性格が強く、銀行などでも組合役員が出世への一つの条件だったりする奇妙なことになっている。

自分も日本企業にいた時に中央執行委員会という組合執行部の書記長に選ばれた事があったが、会社役員との団交(団体交渉の略称)の席で、人事担当役員が「私が組合委員長だった頃は会社の為を思ってズバズバと物を言ったものだ。」などと言い出した際には、どっちが経営側かと首をひねるくらい。

そうかと思うと組合員の利益ばかりを要求して、国鉄時代はやたらとストで電車が止まったり、成田空港までの出勤のハイヤーを勝ち取った日本航空が競争力を失って国の援助での再建になったりと組合に対する一般国民のイメージもあまり芳しいものとは言えない様だ。

更には、ソフトバンク、楽天などの新興企業には組合がない場合が多く、また近年増加している非正規と呼ばれる派遣労働者も組合の加入の対象外である事が多いと聞く。

こうして日本における組合活動の存在感は段々と薄れて来ているのだが、もう一つ治外法権とでも言える領域が外資系企業だ。勿論、外資系企業でも労働組合がある会社もある。

本国で組合の力が強く日本の従業員もそのメンバーになるという場合もあるが、多くはトラブルを機に日本で労働組合を作る場合、又はXXユニオンと呼ばれる社外の独立系組合のメンバーになる場合。


部下の言動を巡って相対する事になったのは正にこの後者。

元々は年次の昇給率を巡る争い。全体の予算が3%アップだった所で若干3%を下回る率を提示したこと。

極めて優れた成果を出した人には3%を上回る昇給を付けるので、当初の目標を全て達成した人で3%、いくつか足りないと3%を下回ることになる。

「スタッフのマネージメントの点でもう少し頑張って下さい。」と、昇給通知書を渡す私。

「はい、分かりました。」と、その場は収まったのですが翌日また部屋にやって来て、

「すみません。もう一度教えて下さい。」と。

「何をですか?」

「私は昨年、これこれのプロジェクトを全部自分でやり遂げました。何で3%以上の昇給にならないか理解できません。」

最初は丁寧に話をしていましたが段々と感情が激して来たのか、詰問調で声も大きくなってくる。

「全部自分でと言うけど、実際には部下がやった事も多いじゃないか。」

「いいえ。私がやりました。」

それから延々と自分がいかに苦労してプロジェクトの完成に寄与したかをまくしたてた。

「頑張って貰ったのは評価してます。でも、仕事は自分一人で出来るわけでは無いでしょう。

そう言う所をもう少し考えて貰えればという評価なんですよ。」

益々、激して来て今度は、いかに部下が無能で自分が酷い目に遭っているかをとうとうと述べ出した。

「待って下さい。部下をどう育てるかがマネージャーの大きな仕事なのに、それを放棄する様な発言はどうでしょう。彼らにも彼らの主張が有るし。」

実はこのマネージャーの部下からもヒアリングをしており、彼らの言うにはパワハラまがいに頭ごなしに否定されたり、自分は何もしないのに成果は独り占めという事が多々あったとのことだった。

穏便に時間を掛けてコーチングを行なって徐々に分からせるつもりであったが、こうなると却って良い機会かもしれないと思い、このマネージャーの部下からの意見をぶつけてみた。

ところが反省するどころか、自分の論に酔ったかのように反論をまくし立てる。

こうなってはもう話も出来ない。

「あなたの言い分は分かりました。もう少し、本社や関係部署の人達の話を聞いてみましょう。」

という事で、その日の話を収めた。本社というのは、この会社はアメリカの会社の日本法人で様々な場面で本社の人達と仕事をする事が求められる。

(さて、どうやって話を進めるか?)

その時の自分は、まだ皆んなが納得する解決策があると楽観視していた事は否めない。

これから続く3ヶ月の闘いについても微塵も予想していなかった。





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