5年でハイリスク妊娠、中絶、離婚、再婚、出産を経験した私が伝えたい4つの事・前篇

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 学生時代から、自分の周りや雑誌、ネットなどで、「中絶」の話を見たり聞いたりするたびに、不快な気持ちになっていた。
 同じ女性として、軽蔑さえしていた。
 まさか自分が当事者になるなんて、思いもよらなかった……。

 この話は、胎盤が1つにつながった三つ子を自然妊娠し、NICUが足りないこと等を理由に複数の病院から受入を拒否され、最終的に中絶を選んだ私が、その経緯、その後自分の身に起こった事です。
 正直、書くべきかすごく悩みましたが、誕生すれば2億分の1の確率の妊娠という体験をしたからこそ、伝えられることがあるかもしれない、そう思い投稿しました。
【前篇の全文字数:約13,000字】
1.妊娠発覚、しかも双子!?
2.双子確定、しかし……
3.出産できる病院探し
4.2週間後、エコーに映ったもの
5.地域周産期医療センターへ
6.「うちでも受け入れられない」
7.元気な子どもが産まれる可能性は、ほぼゼロ
8.三つ子に会いたい
9.出産しても、死産でも学会もの
10.母体のリスク
11.「四つ子がいるんです」
12.帰っておいで
13.T産婦人科に戻る
14.現実は甘くない
15.2007年9月6日
16.追い打ち

1.妊娠発覚、しかも双子!?


 妊娠が発覚したのは2007年6月。お互い27歳の時だった。
 2006年に結婚し、1年が経っていた。
 夫は調理師。調理師を派遣する会社に勤務し、ある病院で副主任を務めていた。
 前に勤めていた職場の同僚の紹介で付き合いだした。
「いいやつなのに、女性に奥手すぎて、この3年彼女が居ないやつがいる」と。
 彼は、朝6時から夜6時まで働き、休みはほとんどなく、給料は手取り15万円だった。
 しかし、私もIT関連企業に勤めており、育児休暇の取りやすい職場なので、2人で力を合わせれば、何とかなると思っていた。
 私が診察にいったのは、Iという産婦人科だった。
 そこは駅から徒歩2分で、夜8時まで診察しているので、仕事をしながら通うのにぴったりだった。ネットの口コミで評判がよいのも決め手だった。
 うちには車がないので、駅近という条件は外せなかった。
 内診台に上がる。妊娠5週だった。

I医師
おお…たまごの黄身が二つあるねぇ
き、黄身?
I医師
一卵性の双子の可能性があります。
  エコーには、確かに白い丸が二つ、ちょんちょんと見える。
 双子の可能性というのは、まったく考えたことがなかった。
 夫の親族にも、私の親族にも、知る限り双子がいないからだ。
 子供の頃、「ミラクル☆ガールズ」という双子が活躍する漫画が大好きで、双子に憧れていた私は、思わず「やったぁ」と笑顔になった。
 念のため、1週間後にもう一度診察することになった。
 これから子供が生まれて、保育園を探して、たまの夫の休みには遊園地にでかけて、いつか家を買って…。

 そんな「あたりまえ」の未来が、確実にくると、信じていた。

2.双子確定、しかし……


 1週間後、I産婦人科へ。
 妊娠6週、やはり双子だった。
I医師
楽しみですねぇ!
はい!
I医師
でも申し訳ないですけど、うちでは出産できませんから
え、ええっ!?

 一卵性双生児というのは、本来1人分の部屋に、2人入り込んでいる状態。
 帝王切開の確率は約9割、早産の確率は約8割。
 設備の整った病院での出産が必要とのことだった。
 さらに、私の住む市には、それだけの設備がある病院は無い、ということもわかった。
 一応、人口20万人の、そこそこ大きな都市なのに……。
 紹介してもらった大学病院は、バスと電車を何度も乗り継がないと行けない場所だった。
 双子はいいな、羨ましいと思っていたが、まさかそのようなリスクがあるとは……。
 早くにわかってさえいれば、出産する場所なんてどこでも選べると思っていた。
 夫は、

まぁ何とかなるってー。てか双子やばいな。もうパチンコできないな。打ち納め行ってくる!
 と、のんきなものだ。ていうか、何度目の打ち納めなんだろう…。

3.出産できる病院探し


 それから、私の病院探しが始まった。
 念のため、市で一番大きな病院にも電話をかけてみる。
 しかし、双子のキーワードを出した途端に、「もうベッドがいっぱいで」と断られてしまった。
 他の病院にも電話をかけるが、同じような理由で断られる。厳しい。
 夫の学生時代からの友人は、隣の県で一番大きな病院を提案してくれた。
夫の友人M
日本一の病院だから! 俺の知人が妊娠したあとに難病にかかって、ここに通ってたんだ。
 そこは、夫の実家の市内にあった。
・多胎外来がある。
・母性内科というものもある。
・NICUだけでなくMFICU(母体胎児集中医療室)という施設もある。
・小児科も細かく分かれて10以上あった。
 という、すごいところだ。
 電話をしてみると、とにかくすぐに受診してくれという。
 しかし、私はここで、躊躇してしまった。
 結婚して1年、まだまだ夫の両親に頼るには、遠慮があったのだ……。

妹を取り上げてくれた産婦人科へ


 そうこうしているうちに、実母が妹を出産したT産婦人科にコンタクトを取ってくれた。
 そこは個人の小さなクリニック。
 9歳差の妹を取り上げてくれた医師はまだ現役だった。
「うちの娘が、一卵性の双子を授かったんですが、なかなか受け入れてもらえる病院が見つかりません。先生どこか良い病院をご存知でしょうか」
 母が尋ねると、
T医師
うちでも出産できるかもしれません。一度見せに来てください
 との、ありがたい申し出!
 正直、個人の病院での出産は無理だと思っていた。
 さっそく、診察を受ける。

 T先生はすっかりおじいさんになっていたが、優しそうな雰囲気があり、私はリラックスして受けることができた。
 写真は9週。大きさはどちらも18.2mm。心音も無事確認。
 
T医師
100%うちで面倒見るとは言い切れませんが、うちの病院でも出産可能です。今までうちで、双子で大学病院に搬送したことはありません。
本当ですか!? よかったぁ!!
T医師
ただし、臨月まで持たせるために、子宮を縛る手術が必要です。2週間後にまた来てください。いつ手術をするか決めましょう。
は……はい!(痛そうだけど、頑張らなきゃ!)
 T先生いわく、私は「二絨毛膜二羊膜双胎(にじゅうもうまくにようまくそうたい)」というパターンとのことだった。
・二絨毛膜二羊膜双胎…胎盤が2つ、赤ちゃんのお部屋が2つ
・一絨毛膜二羊膜双胎…胎盤が1つ、赤ちゃんのお部屋が2つ
・一絨毛膜一羊膜双胎…胎盤が1つ、赤ちゃんのお部屋が1つ 
 もし、胎盤が1つだと、栄養や血液を1つのルートで分け合わないといけない。
 そして双体間輸血症候群といって、血液の供給のバランスが崩れ、片方の赤ちゃんに血がいきわたりすぎ、もう片方の赤ちゃんには血がいきわたらない…そんなことも発生するらしい。
 また、片方の赤ちゃんが残念な結果になってしまった場合、もう一方の赤ちゃんも影4響を受けてしまう。
 さらに、お部屋が1つだと、お互いのへその緒が絡まって危険らしい。
T医師
二絨毛膜二羊膜双胎は、一番リスクが少ないパターン。十分、うちでも出産可能です。
 とのことで、ひとまず安心した。
 子宮を縛る手術というのは想像もつかないが、とにかく出産できる病院が決まり、私は安堵し、性別もわかっていないのに、名づけ辞典を買って名前を考え出した。
お、この漢字、格好いい! あ、こっちもいいな! これにしよう、彪(ひょう)と羚(れい)!
お、おう……
 まぁ、まだ出産まではあるし、ゆっくり考えよう。
 とりあえず、胎児ネームは「とんきち・ちんぺい・かんた」になった。
 この時点では、事態を深刻に捉えてはいなかった。

4.2週間後、エコーに映ったもの


 2週間後、私はT産婦人科に足を運んだ。
 
先生、二人とも心臓ちゃんと動いてますか?
T医師
うーん、動いてはいる。が…
えっ、何かあるんですか? 成長してないとか?
T医師
そういうわけではないんだが、これは……三つ子だなぁ……
 なんと、エコーには三つ子が映っていたのだった。
 
 4.1センチ。
 3.7センチ。
 3.8センチ。

T医師
申し訳ないけど、うちでもさすがに三つ子は無理だ…
そ、そんな…
 私の病院探しは、11週で振り出しに戻ってしまった。

 先生は、隣の市にある、A地域周産期母子医療センターに指定された病院への紹介状を書いて私に手渡した。とりあえず来週もT産婦人科で検診を受けることに。
 特に不妊治療をしていたわけではない、自然妊娠だ。

 なぜ、このようなことになってしまったのだろう……。
 思わず涙ぐんでしまった。
 夜、夫に説明したところ、

お、俺、ちょっと外の空気吸ってくる……。
 と、ふらふら外に出て行ってしまった。すぐに帰ってきたけれど。
 彼も、かなり動揺しているようだ。そりゃそうだ、いきなり3人のパパになるんだもの。

 翌日、とりあえず母子手帳を3冊もらいにいった。
 書く欄が3倍で大変だが、頑張ろう。

12週

 翌週、夫と実母と3人でT産婦人科へ。
 3人でエコーを見せてもらう。
 3つ子のうちの一人の動きが弱いとのことだった。心配。
 先生からは、A医療センターでの受け入れ体制が整ったこと、8月末に子宮口を縛る手術をし、9月から入院になるとのことだった。
 ちょうどオーストラリアで一卵性の三つ子が生まれたニュースが流れ、私を勇気づけた。
 オーストリアで一卵性の三つ子誕生、確率2億分の1
 http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-27290420070809
 しかし、ニュースになるのは、成功するケースが極めて稀だからであり、その陰で泣いている人もたくさんいるのだということにまでは、私は思い至らなかった。
 夫は
事情を話して、給料を何とかあげてもらえないか、会社に相談してみる。
 と言ってくれた。頼もしい!
 本当は、給料よりも、休める職場に転職してほしいとも思うが、そのつもりはないようだ。
 夫曰く、「飲食はどこもこんなもんだ」とのことだった。
 それに、夫なりに、現在の仕事にやりがいを感じているらしい。

13週

 T産婦人科で検診。本来ならそろそろ検診も1ヶ月に1回になる頃だが、私の場合は毎週通う。
 しかし、子供に会えるので苦にはならない。
 今週は、動きが弱いといわれていた子も含め、3人とも元気で一安心。
 しかも、二卵性+一卵性の三つ子の可能性もあるそうだ。
 それならリスクも下がるし、性別も分かれるかもしれない。
 もちろん、元気に生まれるなら同じ性別でも構わないのだが……。
 しかし、尿検査の結果を見たT先生の顔が、急に曇った。
T医師
蛋白と潜血、両方とも++だな……
 私に妊娠中毒症の兆候が見られるとのことだった。
 腎臓が弱ってきているらしい。
 次週、いよいよA地域周産期医療センターに向かうことになった。

 驚いたのは、夫が勤務中に電話をかけてきたことだった。
 仕事に真剣な夫が、勤務中に電話をかけてくる事など今までになかった。

元気ないって言われてた奴、どうだった!?
 よほど、心配だったようだ。3人とも元気だと伝えると、「おっしゃ!」とても喜んでいた。
 まだ性別はわからなかった。早く知りたい。

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