④ 無一文で離婚した女が女流官能小説家になり、絵画モデルとなって500枚の絵を描いてもらうお話 「夏のグループ展に出品した絵は?」

1 / 4 ページ

前編: ③ 無一文で離婚した女が女流官能小説家になり、絵画モデルとなって500枚の絵を描いてもらうお話 「彼のアトリエへ」
後編: ⑤ 無一文で離婚した女が女流官能小説家になり、絵画モデルとなって500枚の絵を描いてもらうお話 「ポーズを決める」




 

 岡村と付き合い始めの頃、

(彼はもしかしたら童貞? )

 と私は思っていた。

 そのくらいいつも彼は、もじもじおどおどとしていたのだ。

 私と向かい合うと、身も世もあらぬ…と言うほど恥ずかしそうだった。

 彼は、女性に憧れるあまり童貞。

 一生独身のまま、あの古びた洋館にこもって絵を描き続けている画家さん…。

 そう思っていた。

 もちろん、アトリエに通いはじめても、指一本触れられたことはない。

 午前の11時に彼の町の駅改札に着くと、彼は笑顔で両手を大きく振って出迎え、歓迎してくれる。

「すいません、お待たせして!」

 その日は1時間も遅れてしまったのだ。

 彼は、恥ずかしそうに答えた。

「い、いいえ、なんでもありません。僕、待つのは好きなんです。待つ間、その人のことを想っていることが出来るから…」

「まあ」

 だいたい私は人を待たせて怒られてばかりいるので、彼のこの言葉には感激した。

 こんな風に言ってくれる人もいるんだ…。

 アトリエに行く前に、駅近のデパートでランチ。

「藤先生とこうして向かい合うと、僕上がってしまって…」

 恥ずかしそうに、震え声で告げた岡村は、

コーヒーに砂糖を入れようとして指が大きく震え、スプーン三杯もの砂糖を、すべてテーブルにぶちまけてしまったのだ…。

 あっけに取られていると、

「す、すいません、すいません…」

 真っ赤になり、懸命に謝りながらこぼした砂糖をかき集めている。

 まるで中学生!!!!!

 

 その頃の彼は、子供も一緒によく遊びに連れて行ってくれた。

 動物園、ディズニーランド、映画…もちろんすべて費用は彼が出してくれ、子供にも、

「今度はおじちゃんとどこに行きたい? 」

 と超やさしかった。

 井の頭公園に行った時のこと。

 夕方近くのお寿司屋さんに入った彼は、

「デパートに行きましょう」

 と近くのデパートに連れて行ってくれた。

 そこで、財布から何枚かの一万円札を抜き出すと、

「これで僕ちゃんに、好きなものを買ってあげてください」

 と私に渡すのです。

 

みんなの読んで良かった!