⑤ 無一文で離婚した女が女流官能小説家になり、絵画モデルとなって500枚の絵を描いてもらうお話 「ポーズを決める」

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前編: ④ 無一文で離婚した女が女流官能小説家になり、絵画モデルとなって500枚の絵を描いてもらうお話 「夏のグループ展に出品した絵は?」
後編: ⑥ 無一文の女が女流官能小説家となり、絵画モデルとなって500枚の絵を描いてもらうお話 彼の正体は? プレーボーイ?

 



 

 表情さえ気をつければいい。

 そう思った。

 凛とした表情か、謎めいているか、憂いのある表情か。

 どちらかで描こう。

 スナップ写真のように笑っていてはダメなのだ。

 表情さえ品があれば、絵はうんとエロチックでいいのだ。

 秋の展覧会には、2枚まで出品できることが決まっていた。

 

 どんなポーズにするか。

 まず、これを決めないといけない。

 

 二人で美術館をたずね歩き、画集で名画と呼ばれる絵の数々を見て、研究しました。

 本屋には、モデル写真が掲載された「画家のためのポーズ集」が出ていて、その中にもヒントになるいいポーズがあります。

「一枚はアラビアンナイト風で行きたいと思う。僕、女性のあの衣装がエキゾチックで大好きなんだ」

 ハーレムの女性は、人気のある題材で、ドラクロアやルノアール、多くの画家たちが描いています。

 もう一枚がなかなか決まりません。

「私はこれがいいと思うわ、どう?」

 私が見せたのは、ある有名な画家の画集にあった、油絵の裸婦。

 髪を無造作にアップにした女性が後ろ向きに座って、背中と臀部を見せた裸婦像です。

 その元絵では、足の下に白い布を流して敷いていました。

 裸婦に白い布をどこかに添えるのは、絵の鉄則です。

 裸婦の肌が画面になじむのです。

「いいね」

 彼も賛成しました。

 同じポーズを描いても、同じ絵になる心配はありません。

 不思議なことに同じポーズを描いても、画家が違うとまったく違う絵になるんです。

 さっそく裸婦の座りポーズから描くことになりました。

 

 腰まで届く長い黒髪を金色のバレッタで簡単にアップ。

 白いシーツを敷いたマットの上に、足を横流しにくずして座り、後ろ姿を見せます。

「その手を髪に持っていって」

「もうちょっと顔をこちらに向けてー」

「視線はこの位のところを見て」

「もうちょい下に」

「上向けてー」

 彼が次々と指示しながら、色んな角度で24枚とりの写真フイルムを2本撮ります。

 30分で出来上がる現像屋さんに持って行き、その間にデパートの食堂で食事。

みんなの読んで良かった!