⑥ 無一文の女が女流官能小説家となり、絵画モデルとなって500枚の絵を描いてもらうお話 彼の正体は? プレーボーイ?

前編: ⑤ 無一文で離婚した女が女流官能小説家になり、絵画モデルとなって500枚の絵を描いてもらうお話 「ポーズを決める」
後編: ⑦ 無一文で離婚した女が女流官能小説家になり、絵画モデルとなって500枚の絵を描いてもらうお話 「秋の展覧会、出品した絵は…」

 

(雑誌に掲載されたペン画・デッサン)

 (バラの吐息)


[新聞 挿絵)


 このころ私はまだ、彼は女にコンプレックスがあって、付き合えないか童貞?

 と思っていた。

 だが、そんな私の考えをくつがえすようなことが起こったんです。

 

 ある時彼は、

「あなたの町に遊びに行きますよ」

 と言って、私が住んでいた私鉄沿線の小さな駅に来てくれた。

 記念に、と言って彼は、

「まち子先生の何でも好きなものをプレゼントしますから」

 と言ってくれ、私はコードレスの掃除機と、下着専門店で美しい外国製の総レースの下着を彼に選んで買ってもらった。

 そして夜は、駅前のスナックに飲みに行ったのだ。

 まだはやい時間帯だったので、ホステスさんやママさんが多勢ボックス席についてくれた。

 この夜の彼は、ぐいぐい飲んで、よく喋った。

 いつも口下手でもシャイな彼なのに、見違えるようだった。

 豹変した、と言ってもいい。

 岡村が画家だと告げると、ホステスさんから喚声が上がる。

「美人ばっかり描いていらっしゃるんでしょう!」

 岡村は、

「こちらの方は売り出しの女流作家さんで、私の絵のモデルもなさってくださっているんです」

 と紹介してくれた。

「あらあ、ステキ! いいですわねえ」

「うらやましいわあ」

 ホステスさんから嫉妬ビームの視線が飛ぶ。

 この夜の岡村はよく飲みよく喋って、ホステスさんからモテモテだった。

 一人のホステスさんが秋田出身だと告げると、

「全身が透き通るような美しい肌なんでしょうね」

 とすかさず褒める。

「そんなことないですよう~」

 彼女が頬を染めると、

「僕の目はごまかせませんよ。僕の以前のモデルさんも秋田出身でしたが、抜けるような白い美肌の持ち主でしたから」

 じっと彼女を見つめて、すらすらと男らしく喋った。

 別人のようだ。

 30代のメガネをかけたママさんが、

「私、この近くにて、マンションを借りて、歩いて店に通ってるんですけど。たまに男性客につけられたりして、怖いことがあるの~」

 と告げると、すかさず他のホステスたちが、

「ママ~今日はこちらの画家先生に送ってもらったらあ」

 とはやし立てる。

「僕が送ると、送りオオカミになりますから」

 彼は魅力的な笑顔で笑っている。

 私は、N先生が私の町に来てくれ、こことは違うが駅近の商店街のスナックで飲んだとき、同じような言葉でママさんに誘われていたのを思い出した。

 歌もうまく、すごくいい声で低音を響かせ男らしい歌をろうろうと唄った。 

(歌上手! しかも彼、こんなに女性の前で喋れる人だったんだ…)

 びっくりすることばかりだ。

 ホステスさんたちをきゃあきゃあ言わせ笑わせ湧かせ、モテモテなのに、彼は、

「僕、本当はこういう女性のいる店は苦手なんです。はやく出ましょう」

「それに、僕はまち子先生以外の女性は目にしたくない。絵を描くさまたげになりますから…」

 と囁くのだ。



 この店で二人は小さな諍いをした。

 私が、

「もうすぐ35歳になります」

 と言ったときだ。

 岡村は、

「まち子先生が70歳になっても80歳になっても、僕の力で不夜城のように美貌を輝かせて見せます」

 と言ったのだ。

 その言葉が当時の私には気にいらなかった。

「岡村先生は私がアラサーだから若くないと想って、そんなことをおっしゃるのね。10代や20歳の若いコには、そういう言葉を言わないでしょっ! 」

 とかんかんに怒って噛み付いたのだ。

「まち子先生はお若くてお美しいです」

「僕はどんなにあなたに憧れて好きか…言葉では言えないくらいですっ」

 涙ながらに、訴えたのだ。

 スナックを出ると、彼はへべれけに酔っていた。

「まち子先生、今夜は先生の部屋に泊めてください! 僕は、僕は、ずっとまち子先生が好きで好きで、好きでたまらないんです!」

 と夜道で大声で叫ぶ。

「だめですわ、お泊めするなんてできませんわ」

 断ると、

「なぜなんですか?!」

 いきどおる。

「急にはダメなの」

 こっちはこっちで、つごうがあるのだ。

「わかりました」

 彼は憤然と夜の道を去って行った。

 次の朝、彼に電話をかけたが出ない。

 次の日も留守だった。

 いったいどこに出かけているのだろう?

 もしかして、何人かいる彼女のところかも?

 疑心暗鬼がひろがる。

 一週間後に彼から、

(酔って寝ていて電話にも出ず、大変失礼しました)

 と謝りの電話があり、モデルを再開したのだが、この頃には、

(もしかして、彼もプレーボーイさん?)

 と思い始めていた。

 

 と言うのは、その頃までに私は、どういうわけかプレーボーイとばかり交際していたのだ。

 好き好んで交際したわけではない。

 最初のうちは、この方こそ、女なれしていなくてシャイで一途で、私を愛してくれる方…。

 と思うのだが、交際して三ヶ月も立たないころ、(あっ、同時に5人と進行しているプレーボーイさん)と判明するのだ。

 プレーボーイには女性の口説き方、付き合い方に共通のルールと言うか、テクニックがある。

 その口説きテクが全員共通している…。

 女性から、

「おモテになるんでしょう?」

 と聞かれた時、

「僕はモテません」

 と答える。

 女性と向き合うと、とにかくシャイで恥ずかしそう。

 あなたの町に行きます。と言って、女性の住む町で飲む。

 N先生もそうだったな…。

 女性に拒絶されたり断られたとき、間を置かず、また誘ってくる…。

 N先生もそっくり同じだった。

 これらの事が、すべて岡村にもあてはまる。

 もしかしたら、彼はとんでもないプレーボーイなんじゃないだろうか?

 だんだんとそう思い初めて来たんです…。

 

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⑦ 無一文で離婚した女が女流官能小説家になり、絵画モデルとなって500枚の絵を描いてもらうお話 「秋の展覧会、出品した絵は…」

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