口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ⑥ ラストチャンス編

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店での私の状況を聞いてくる様になっていた。


私は見栄を張れるような身分でもなかったので素直に状況などを話していた。


その話を聞いてYは

「もっと頑張んないとだめじゃん」

みたいな事を言っていた様に思う。


そして私も

「結構頑張ってるつもりなんだけどね」

と冗談ぽく笑って切り替えしていた。


居酒屋に入ってから2時間程が経過していた。

居酒屋の会計はYが払ってくれた。

情けないが・・・いや、その時はありがたいと正直思った。


私「本当にいいの?」

Y「だって、お金ないでしょ?」


(すいません。助かります。)

私は心の中で小さく謝った。


Y「まだ時間ある。」

私「今日は店ないからね。」

Y「お茶でも飲んでく?」

私「?いいの?じゃあちょっと上がらせてもらおうかな。」


Yの家は居酒屋からは歩いて10分程度の場所だった。

一人暮らしだったが珍しく、一軒家の平屋だった。

外見は古かったが、中に入ると驚いた。


家の中はリフォームされており、外見からは想像もできないくらい広くて綺麗だった。

お茶を飲みながら少し話をしていたと思う。


その日、私は少しで帰るという事はなかった。


Yは年上という事で遥か年下の私が話やすかったのかも知れない。

私は私で最後のチャンスと思っていたので、自分から帰るという言葉は出すことはなかった。


その日に男と女の関係になるという事はなかったが、一緒には寝た。


付き合ってもいないが一緒に寝る。


そして私はもちろんYの事を好きでもない。

好きでもない女と一緒に寝る。


・・・・ホストらしいと言えばらしいのかも知れない。

だがその頃の私にはとても時間が長く感じた。



かわいいからセックスする。

かわいくないからセックスしない。

お金になりそうだからセックスする。

お金にならないだろうからセックスしない。


そんな事ではなかった。


私はYの事を別に好きではなかった。

19歳の私は、そういった感情が優先する男だという事を自分自身でも初めて知った。

ホストとしては不向きだったのだろう・・・。


他人と一緒に布団で寝るという事に慣れていない私。


寝た振りをしていて中々寝付けなかったが、いつの間にか私は寝ていた。

朝起きると、朝ご飯のいい匂いがしてきた。

Yは料理がとても上手だった。

その朝ご飯を頂き、昼ごろに私はYの家を出た。


 私「あ~!疲れた!」



こういうシュチュエーションに慣れていない為、色々無理して相手に合わせていた事によって私はとても疲れていた。


しかもその合わせていた時間がほぼ丸一日に及んだのだ。


19歳の童貞の自分には、今振り返れば力の抜き所がわからなかったのだろう。


せっかくのラストチャンスにも中途半端な自分自身に、少し腹を立てたのを覚えている。

その帰り道には今月から給料がないという現実がのしかかっていた。




それから一週間程度経った頃、いつもの様に店で現状と明日の事を忘れようとしているかの様にヘベレケになっていた。


リアル Tomorrow never knows だった。


K野専務「K君キャッシャーまで。」


店内にマイクのアナウンスが響いた。

ホストは携帯を持ったまま接客するのは禁止だったので、携帯を受付兼事務所(キャッシャーと言っていた)に預け、電話がなるとキャッシャーがマイクで呼ぶのだ。


その理由はもちろん接客中に電話にでるなど失礼だし、スムーズに席を離れれるという理由もあったのだろう。


キャッシャーに向かい電話を受け取ると通話中の所に名前がでていた。

Yだった。


私「もしも~し。」


酔っぱらっているのでちょっとアホっぽい対応になっていた。


Y「ちょっと何?酔ってんの?今から友達とBに行こうと思ってるんだけど、入れる?」


 酔いが覚めた!


 私「だっ、大丈夫だよ。」

 Y「わかったよ。今から30分ぐらいで着くと思うから。

初めてだから電話したら下に降りてきてよね。」

私「わっ・・・わかった。」

Y「あっ、あと別に新規料金じゃなくていいから。とりあえず5万もあれば足りるでしょ?」

私「えっ!?もっ、もちろん・・・大丈夫だよ。友達は新規料金でやっとくから・・・。



・・・俺の指名でいいの?」


Y「当たり前じゃん、何言ってんの?」


信じられなかった。

初めて自分指名のお客さんが今からくる。

しかもいきなり新規料金じゃなくていいとまで言ってくれた。

普通そんなお客さんいない。

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