口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ⑦ 悲しきヒモ編

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人生初の指名。自分史に残る快挙だった。

街でパレードをとりおこないたい気持ちだったが・・・


そんなに甘くなかった。


5万程度売り上げを上げたところで、30%バックが貰えたとしても1万5千円。

そこから地獄の税金+地獄の旅行積立金が入れば給料どころかマイナスである。


人生初の快挙に酔いしれる事もできなかった。

そんな状態では指名をとったとはいえ一瞬・・・

所詮、自己満足であった。


その週の定休日に私はまたYと食事に行った。

そして食事が終わった後、以前の様にYの家に上がった。


それまでの間にも、電話で連絡はとっていたのだが……

定休日までの間に、私の気持ちに変化が起きていた。




店に来店した時の


「新規料金じゃなくていいから。」


というホストという職業を分かってくれた上での気遣い。

ちょっと強気な、いきなり


「後30分ぐらいで着くから。」


というようなギャップなどにより・・・好きになりかけていた。


その日から私とYは付き合うようになった。

一年前の私が、想像もしないぐらいの年上の彼女だった。


その日は緊張で上手くいかなかったが、いつしか・・・

童貞からの卒業式が執り行われていた。

尾崎豊の「卒業」が頭の中でリピートしていた・・・。


その定休日以降、私はYの家に毎日帰る様になった。

その理由は、付き合う事になったという事もあるがもう少しダサイ理由もあった。


1、お金がなくご飯を食べるお金がない。

2、その頃は寮に入り浸っていたが、寮にいるとパシリに使われる事が多い。


先輩からの電話で急に呼び出される事も多々ある。

その様な状態から脱出したいのも大きかった。

お客さんの家にいると思われていれば、先輩の用事も回避できた。


しかし完全なヒモだった。

仕事をしているが給料はない。

いや、給料がないのだから仕事とも言わないのかもしれない。

それでもまだ辞めるという選択肢はなかった。


家庭があるわけでもない、家も自分で借りている訳ではない。

何一つ責任を負うという概念が無い子供の発想だったから続ける事ができていたのかもしれない。


相変わらずお客さんはできていなかったが、Yのおかげで生活は確保できていた。


仕事を頑張っているのにヒモ生活

が開始してから一か月程たった日の昼頃だった。


Y「出掛けよ。」

私「んっ?別にいいけど・・・・どこにいくの?」

Y「買い物付き合って。」


Yと私は買い物へ出掛けた。

タクシーで栄に向かい、Yに言われるがまま着いていくと、


なんと・・男性専門のインポートショップだった。


そこの店は栄の中心にあるビルの5階に有り、広いワンフロアの中で

ブランド物の型落ちの品が通常の値段よりも安く売っている店であった。


Y「格好がショボイからお客さんができないんだよ!」


 と怒られているのか、ディスられているのかわからない様な言い方だった。


Y「今日は私が買ってあげるよ。」

私「・・・・まじ?」

Y「まぁ、頑張ってお客さん作ってよ。そうしたら今度はお客さんに買って貰ってね。」


と言いながら、

グッチやアルマーニといったブランド物のワイシャツを4枚程、

同じ様なブランドのネクタイを5本程度、

さらにブランドの靴を2足。


私の意見はほとんど参考にされず(無視され)Yは選んでいった。

私はダサかったのだろうか?

自覚はなかった・・・。


もちろん今でも自覚はない。



自分に起きている事の実感のないまま、Yはレジへと進む。

ごく平凡な一般家庭+犬、猫

の次男として生まれた私には、

グッチやアルマーニといったブランド物のYシャツやネクタイなどはもちろん縁がなかった。

実感がない為、喜びもその瞬間にはまだ感じる事が出来なかった。

その後はスーツを買いに行った。


Y「ブランドのスーツはまた今度ね。」


と言われスーツは一般のサラリーマンの方などがよく利用する大型店へ買いに行った。


Y「とりあえず、スーツは自分のサイズにちゃんと合ってるかだよ。」


と言われ、言われた通りに店員さんにしっかりサイズを測ってもらいながらスーツを選んだ。初めてのスリーピース、ベスト付きのスーツだった。

「あぶない刑事」の舘ひろしになった気分だった。


自分でもよく理解できないまま買い物は終了した。

結局上から下まで、仕事の時に着るもの全てを、その日に揃えた。


(よくホストなどがお客さんにプレゼントをもらうという話を聞くが、

これがそうなのか?)


と自分に起きた状況に、嬉しいというよりも戸惑いの方が大きかった。


お客さんではなく、私は彼女に買って貰っていたからだ。


(これでいいのか?)

みんなの読んで良かった!

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