最愛のビッチな妻が死んだ 第4章

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日常編02

【交際2日目 2月21日】


「楽しんでねーー。愛しい恋人よ」

「ありがと。気を付けて」


この日、あげはは下北沢のクラブで行われた友人のラッパーのパーティに参加。僕はライブの写真撮影だった。

酔っ払いのあげはから、実況中継のLINEがたくさん来た。


「パーティはフリー強制テキーラ。物凄くアウェイ」

「物凄くアムウェイって見えたw」

「やめろwwあむー」

「ウェ~イ」

「あむー」

「ヴェイン」

「ごきげんやな」

「寂しさ紛れに」


冗談めかしてそう送ったが、実際今日あげはに会えないと思うと無性に寂しかった。


「ずるい男だなー」

「ズルいのか……」

「褒めてない言葉。帰りたい×909」

「わかってる」


お互いに会いたいのは十分に知っている。あげはの自撮りも送られてきた。


「ありがと。少しでもあげはを近くに感じれて、うれしいよ」

「でもFBでさりげなくアピールしてるけど。らら。酔った」

「大丈夫?」

「結婚しましょ」

「もう?」

「うん」

「結婚か~」

「離婚するより楽しいって」

「それは知ってる」


突然、結婚を申し込まれても僕は不思議と戸惑いはなかったが、冗談だと思った。


「あなたと一緒にいないのが不自然に感じる気がするから」

「ありがとう」

「どういたしまして」

「なんだろう、うれしい」

「大人のオヤツの時間だ。酔ったフリをしていたけど、なんだかんだで飲んで酔った」

「行ったら駄目だよね。親友んち泊まろかなーー」

「寝てるんかな? おやーす」


深夜のやり取りの途中、僕は寝落ちをしてしまった。


【交際3日目 2月20日】


朝10時前に起きた僕は、まずはあげはに返信した。


「ゴメン。3時ぐらいに帰って寝てた」

「おはよ」

「おはよ」

「心配してたよ」

「なんでよーー」

「酔っ払って帰れるのかなと」

「それはメールしたもん。なんにせよ、ただいまとかないと、心配しちゃうのーー」

「ゴメン。ただいま」

「うん。あげ、ただいましてない。親友んちでリリック書いてた。正確にはリリック書きながら気絶した。眠過ぎて」

「ゆっくり寝なきゃ」

「寝たよ。酔ったフリして洋平に煽られて求婚してミスって飲んで、そこそこ酔ってみんなでタクって泉岳寺の洋平んち泊めてもらってる」


「求婚してミスって」というのは前日のLINEことだろう。親友とはいえ男の家に泊まったあげはに、僕は軽い嫉妬と不安が入り混じった感情を覚えた。


「(恋人の)心配したり、大体の予定把握してたい方?」

「完全把握はいいけど、いつ会えるかなは知りたい」

「あげは特別なんか変なスケジュールん時だけは知りたいかな。んと、空いてる時間で言うと今日の夜、明日の15:00以降、24日は昼、25日は暇、26日は夕方から無理」

「今夜、渋谷で撮影で8時ぐらいには終わるから、その後とか」

「会いたい?」

「うん」

「言ってほしい、ちゃんと」

「会いたいから会おう」

「うん。好きだよ」

「撮影、終わったら連絡する」

「うん。今恵比寿。ヒップホップの先輩と一緒で、今日はホントにベロベロだ。どうしよ。迎えに来れる?」

「無理ならマジでがち酔ってるから洋平んちに帰ってしまう」「動けない」

「終わった」

「助けて」

「わかった。迎え行く」

「ヤバい、本当に酔ってる。辛い」

「移動する?」

「一緒にいたい? あげは一緒にいたい」

「一緒にいたいから、迎え行くよ」

「愛してる」


僕は教えられた住所にタクシーを飛ばした。


「マジで本当に飲んだ。知り合って初めての酔い方」

「ごめん。でも愛してる」

「あと、10分くらいで着くよ」


酒と違うものでヘロヘロのあげはを僕は家に連れて帰った。今後も何度も会う親友の洋平さんとはこの日初対面だった。


「あげパイのこと、よろしくお願いします」

この夜のだけことなのか、今後の未来のことかはわからなかったが、僕は「もちろん」と答えた。

酒臭いタクシーの中、ロレツの回らないあげはが「好きだよ」とつぶやいた。僕は「僕の方が好きだよ」と頭を撫でた。


膝枕で密着する後部座席に、僕たちの幸せは全部あった。


【交際6日目 2月23日】


もうすでに半同棲して3日が経とうとしていた。朝から仕事だった僕は10時には家を出た。

いってらっしゃいのキスを交わす。


「二度寝しないようにね」

「追い炊きしたお風呂に入って昨日の反省を水に流す。階段駆け上がってベランダからバイバイしたかったのに、立て付け問題で障子が開かなくて。あーうー」


会社からLINEを送る。


「会議終わった」


会議が終わり、会議室のドアを開けた瞬間、僕たちのやり取りは始まる。


「起きてる生きてる愛してる」

「好きだよ。あげが好きだよ」

「知ってる。何故ならあげも共輔を好きだから」

「伝わり切れない気持ちは言葉で伝え合おう」

「うん。言葉ねメールじゃなくてってことね」

「直接伝える方が好き」

「でも、たまには電話やメールでもお願いします。嬉しいから」

「了解」


僕たちは何千回、何万回の「愛してる」「好きだよ」と言い合ったのだろうか?それでも伝えきれないほど、僕たちは愛し合っていた。

神や仏、僕はあらゆる絶対的他者を信じないが、あげはは信じられる。そう思った。


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最愛のビッチな妻が死んだ 第5章

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