最愛のビッチな妻が死んだ 第9章

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交際13日目 3月2日

朝11時ごろ、僕はあげはといってきますのキスをしてウチを出た。


「いってらーー」

「いってきます」

「頑張れ社会人。新婚ごっこを楽しんでいるよ」

「いつも、ありがと」

「好きだよ」


何万回伝えても伝え切れない。


「わー。これからも宜しくお願い致します」

「末長く幸せにし合いましょう」

「はーい」

「あげと一緒なら、どんな状態でも幸せよ」

「あげもよ」

「もちろん、より快適な生活にする努力はするから、一緒に幸せになろ」

「嗚呼」「嬉しい」

「僕らのペースで、お互いのやり方で。ね」

「うん」

「ありがと」

「こちらこそ」

「いつも、毎日、今も感謝してるよ」

「まだもっと頑張れる子だもん!頑張って、時に手を抜きながら仲良くしてたい」

「いい感じ、に手を抜きながらムリせずいこ~」

「それがここ数日のモットー」

「本当にムリしなくて、自然でよいから。ダラダラでものんびりでも速過ぎても、2人なら楽しめるし」

「無理してないよーー。1/fゆらぎ効果で」


僕たちはお互いを求め合い、一緒にいることでお互いを幸せにし合っていた。もう1人では寂しさや不自然さを感じるぐらいに。


「どれだけ早く、どれだけ遠くまで、誰も見たことないとこまで、ブッとんでいけるかより、2人でしか作れない幸せが描ければいい」

「新説だ。早さと遠さと飛びを意識して短かったから、そして毎日遊び歩いているイメージがあったみたいだけど、その時したいことしかしたくないから、今は朝起きて簡易だけど朝御飯準備して送り出して漫画読んで今夜どうしよっかなーと考えているのが楽しいよ。一緒にいたいから、仕事行かない遊び行かないとか、主体性のない女じゃない」

「あげと一緒にごはん食べたり、手つないで買い物行ったり、寝たり、話したり、したいこととしなくちゃいけないこと、全部楽しんでるよ」

「あげもだよ」


あげはに手伝ってもらい、確定申告準備は完了していた。


「日中は確定申告行こうかなと」

「あ、行けそ?」

「書類整理と発注終われば行けそう」

「そかそか。彼氏が確定申告に行こうとしてる最中オナニーしてみたら背徳感ですぐイッた。そして襲いかかる睡魔」

「急いで帰宅しなきゃ」

「ふー、一仕事終えた達成感」

「ゆっくり寝な~。申告を確定してくる」


先日の「あげはを紹介しなかった」件はまだひきづっていた。この日もその友人のライブ撮影であげはを誘ったが断られた。


「『今夜友人のライブ行く?』って言われたり、まだ恥ずかしいって言われたりして、少し悲しい。言わないと後々思い出し怒りするから、機嫌の良いうちに言えと」

「また行きたい?」

「んーん。共輔にも使い分けてる顔もあるだろうし、今回はやめときなさいってパパが」

「次回は連れてく」

「ありがと」

「紹介は徐々にしていく」

「わかってるよ」

「あげ周りにも紹介してね」

「もちろん」

「うれしい」

「違う違う、紹介云々ていうか、一緒に行かないつもりなら、『最初から彼女も連れて来たら?』って言われたとか、『行く?』とか聞かないでって話。まぁ、でも言ったらスッキリしたから、もういい」「気難しい子なの」

「わかった」

「眠り姫。なんかずっと眠い。そろそろ太一着くみたい」

「楽しそうだな」

「何が? 食材を買って来てもらうというヤクザなことしてるよww」

「自宅で3人で会うの」

「ブレーカー落ちた」

「初めてじゃない?」

「初めて。レンジとIHと湯沸かしとテレビで。てか、ブレーカーどこ?」

「ブレーカーの位置、わかる?」

「ブレーカー迷子」

「一階のトイレに」


無事、ブレーカー上げと確定申告は終わった。


「申告終わり」

「お疲れ様!じゃあ、いったん実家帰るねーー」

「了解。また明日ね」

「はーい。楽しんでね」

「帰ったら、家が広く感じるな」

「寂しがれ寂しがれーー」


僕たちはもう、1時間でも1分でも一緒にいないと寂しい身体になっていた。


「あげは寂しい」

「僕も寂しいよ」

「僕の帰宅が10時過ぎていいなら、帰ってきてよいのよ」

「あはは。今ちょうど、たかが呑み会で実家に帰らせるって、何かまだ女の影があるのかな?!って話してたとこだから。そう思ってるワケではなく。冗談でだけど」

「ないよ。明日、太一さんと病院って言ってたのと、あんまりあげを独り占めするとニャンコ寂しがるかなと思って」

「惜しい!病院は明後日だな。なんか、スケジュールかメモを共有するアプリが欲しいね」

「じゃあ、おウチいて」


僕は本音が出た。


「今池袋で日用品を買おうとしてた。うっかり早く帰りたくなっちゃったりしないなら、おうちで待ってるよ。いったんニャンコに会いに実家帰るけど」

「わかった~ありがと」

「彼女が待ってるからって、呑み会を早く切り上げられたりするのは苦手」

「了解」

「ドンキとか薬局とか、なんか買っとくもんある?まな板とか包丁とか、買うよ」

「布団叩きとリステリンしか思いつかない」

「あは、オケ。布団叩き見とく。こうなると、置き手紙が恥ずかしいなww」

「楽しみだ!」

「愛してるよ」


何度もあげはから愛情たっぷりの手紙をもらった。お互いに出した手紙に始まり、一緒に行ったライブや美術館の半券など、すべての痕跡は大切に年ごとの「思い出ボックス」に保存してある。


「ドンキが混み過ぎてて、2人して酔って、下着を買いにルミネに逃げた。宣言通り可愛い生理用パンツ買ったよww」

「人酔いか」

「うん。目に付いた荷物入れたら混沌」

「楽しみだ」

「ザルとタンポン、ランニングウェアとワカメ」

「脈絡ない4点セット」

「布団叩きなかったから、今度車でSM用の一本鞭取りにこよう。バラ鞭がいいかな?」

「バラかな~」


あげはから自撮りがきた。


「愛でたいな」

「愛で倒してる」

「倒してるのかな」


僕はもうライブの打ち上げに突入していた。


「見た目、お似合いです。とさ」

「一緒の写真なんかあったっけ?」

「会場で見てたから」

「あーー。見えてたか」

「あげ、目立つから」

「ありがとう? 大切にします」

「4人ぐらいに言われたわ」

「妾? って?」

「彼女なんでしょ~って」

「妻です。と」

「恋人で彼女で愛人で妻ですな」

「役職多い。嬉しい役職」


結局、寂しさに負けて、高田馬場であげはと合流して一緒にウチに帰った。完全にあげはジャンキーのできあがりである。

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最愛のビッチな妻が死んだ 第10章

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