最愛のビッチな妻が死んだ 第12章

前編: 最愛のビッチな妻が死んだ 第11章
後編: 最愛のビッチな妻が死んだ 第13章

交際18日目 3月6日

前日の酒で潰れていたあげはを寝かせて家を出たため、この日は行ってらっしゃいのキスはなしだった。

出社途中にあげはからLINEがきた。

「起床」

「おはよ」

「んー、お見送りできなかった分、お帰りのチューいっぱいする」

「夜ごはん何食べたい? 買い物行くよ。飲み物ないし」

「ミネストローネと……」

「ハンバーグとかは? 卵使わなきゃだし」

「いいね。おいしそ」

「あ、鍵も作りに行こーー」

「カギ、完全に忘れてたねw」

「え、いつも考えてたよ! でも、共輔と同じとこで作りたかったから」

「カギ屋さん見ると思い出してはいたんだけどね……あ、眠気がきた」

「あんま寝てない? 花粉症の怠さ?」

「花粉症の薬が効いてるのか、会社に行きたくないのかw」

「全部だなww」

毎週行われるネタ出し企画会議がイヤだったのかもしれない。あげはに相談するとドラッグネタとともに「白い粉」だらけの画像が送られてきた。

「ゴミ箱が花まみれっぽくなってしまったww」

「花?」

「コカインの隠語だよ。ガンジャが野菜か山田さん、コカインが花か小久保さん、エクスタシーが多摩川さん。早いのは林さんかな」」

僕は痩せていて服装が地味じゃないせいか、よくシャブ中に間違われる。職質もよく受けるが、取材や周りにジャンキーがいたせいか、ドラッグは身近な存在だったが、あげはに言わせると「何も知らない」レベルだった。

僕たち2人はたまにドラッグもやったが、周りが信じないぐらい数えるほどしかやってはいない。ドラッグがなくても十分に毎日多幸感に溢れた夫婦だったから。

もしやる時は2人一緒、隠れてはやらない。これが僕たちのルールだった。

そんなウブだった僕はいま、あげはと同じ処方箋や寂しさの結晶の様な違法ドラッグに頼っている。1人で。

寂しさも孤独も消えないが、太一さん曰く「下を向いていた気持ちが少しでも前を向けるならいい」。昔から、小林家・北原家のルールは「ルールは破ってもマナーは守る」だった。

「ウチのゴミ箱かと思ったわ」

「いや、ウチのゴミ箱だよw 苺大福の粉が」

「よかった(笑)。流れだけに心配しちゃったよ」

「買い物ちゅー。今日も全力で好いているよ」

あげはは宣言通り、渡してある合鍵を持って、僕が作った近くのカギ屋を訪れていた。

「マスターじゃないからもしかしたら合わないかもって言われたーー」

「カギ? マスターキーだと複写ムリなん?」

「あげが持ってるのがマスターじゃないって。大家が持ってるんじゃない? マスターキー」

「大家からそのカギしかもらってなく、そのカギでコピー作ったから大丈夫だ」

「おけ」

「ガスコンロ代振り込んだ~」

それまで料理をしない僕の家にはIHコンロしかなく、料理好きなあげはのために白い2口ガスコンロを買ったのだ。

「わーい」

「モロモロの支払い終えたら……今週は大人しくしよw」

「今週もう終わるけどww」

「あ、来週かw」

「飲み物重い」

「手伝ってあげたい」

「かわいい岩塩とブラックペッパー買ったーー。」

「お~、だいぶ揃ってきたね」

「高いけどこれって、かわいい容器代だなww」

 帰り道のあげはからギターを弾く男性の写真が送られてくる。

「歩き弾き語り」

「コレ、いま?w」

「うん。さすがは中野区。見てたら曲がるとこじゃないのに曲がってしまった。撮りたくて。あと聴きたくて。んで安定の迷子ね」

「大丈夫? おウチ帰れる?」

「遠くにゴザを発見」

ゴザとは家の前のガードレールにかけてある我が家の「目印」のことだ。

「無事、帰宅!」

「お疲れさま。好きだよ♡」

「一人で食材の買い物出たの、何年振りかな」

「成長する姫さま」

「鍵も問題なく開いたよ」

「よかった」

「なんか太一が話があるっていうから家あげていい? 何か怒られんのかなーー」

「いいよ。どしたんだろ。悪い話じゃなきゃいいけど」

「具合悪いあげを共輔は見たことないから心配とは言ってたから、そんな感じの話かな。たぶん」

「そっか。なんかわかったら連絡ちょうだい」

「もちろん」

「もちろん、具合悪くならないようにサポートしていきたいけど、もし悪くなった時もちゃんとサポートしてあげたい」

「ありがと」

「支え合って、楽しく生きていきたいね」

「そのつもり。太一きたよーー」

「答えが気になるな」

「答え?」

「話したいことの中身。太一さんに明太子あげるのも忘れずに」

「あ、そうだね。2つで一腹ねww」

なんとなく太一さんが伝えたいことの内容が気になって、僕は1時間経ったあと、あげはにLINEを入れた。

「どうだった?」

「いつも飲んでる薬届けてくれて、ちゃんといい子にしてるか確認だった。過保護。あと、次のパーティの相談」

「よかった。安心したわ。太一さんも一緒にごはん食べてけばいいのに」

「共輔、帰り遅いんでしょ?」

「そうなんだよな…今日に限って」

「『また今度くるよ、お邪魔しました』って。鍋の時にでも。明日はかに玉に変更!」

「かに玉もいいネ。明太子渡した?」

「渡したよーー。通りもんも奪われた。明太子、結構辛くて、共輔食べれるかなーー」

「あら~、あげの好物がw 辛いの?」

「うん、あげでも結構辛いと感じる。6つ入りの2つを献上した」

「ごはんあれば、なんとか」

「帰る時炊飯スタートするから教えてね。うたた寝しちゃうかもーー」

「仕事終わり。帰宅する。10時過ぎに到着予定」

うたた寝してるあげはを起こさないよう、LINEもいつもより少なめで僕は帰宅した。ごはんが進む辛さの明太子とあげはのかに玉はおいしかった。

僕たちがあげはの具合を悪くしないように努力していても、悪くさせることは平穏な日々から突然牙を向き、出来事として襲ってくる。

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最愛のビッチな妻が死んだ 第13章

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