最愛のビッチな妻が死んだ 第18章

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後編: 最愛のビッチな妻が死んだ 第19章

  言葉は時に武器になり人を傷付ける。


 先日、太一さんのお供で行ったディスコで会ったオバちゃんに「アンタ相当なイケメンだね」と話しかけられた。その次に発した言葉は場違いなものだった。


「アンタ、影がすごいね。闇を抱えてるね」


 そんなことは三流の占い師でも言える。


「何があったかオバちゃんに言ってみ」


 一言だけ返した。


「妻が亡くなりました」


 少しの間があり、オバちゃんはこう言った。


「私も似たような経験あるよ。アンタが強く生きなきゃ、奥さんムダ死にじゃないか!」


「奥さんの分まで生きろ!」


「世界にはもっと不幸な人いっぱいいるよ!」


「悲劇のヒロインぶってるんじゃない!」


 親身になって説教をしてくれるのはありがたいが、僕は不幸なのではない。つい最近まで絶頂幸福だっただけだ。こんな場所でふと暗い顔をしていた僕が悪いのだろう。


 ただ、僕は地球のどこかにいる顔も知らない誰かではないし、不幸な人も僕ではない。だいたい、悲劇のヒーローぶるのは僕も大嫌いだ。僕は特別な人間じゃないし、特別な人間などいやしない。あげはが僕の中で特別だっただけで、僕はごくごく平凡な人間だ。


「アンタは生かされてるんだよ!頑張れ!一緒に頑張ろう!」


 最後は握手をハグをされた。酒と安い香水の香り。あの日以来、匂いに過敏になっている僕にはキツかった。あのハコに行けば親切なオバちゃんとはまた会えるかもしれない。


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交際28日目 3月16日


「いってらっしゃーーい」


「行ってきます」


 誰かの言葉より、あげはとのキスや何気ない言葉の方が何万倍も僕にとってはありがたい。


 出勤途中にまたネタが浮かばす、あげはとLINEで相談していた。芸能人が集まる渋谷のバーを教えてくれた。


みんなの読んで良かった!