登校拒否児、全国へ羽ばたく

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中学二年生の一学期に、僕は登校拒否を起こした。理由は、誰にも邪魔されず、ギターを弾いていたかったからだ。

誰にも負けない“何か”を手に入れる事で、自分の事を認められる。つまり、“存在の証明”が欲しかっただけなのかもしれない。

父親の趣味がギターだったので、自宅に古いアコースティックギターがあった。4歳の頃から歌手になりたかった僕だから、やっぱり楽器には心をときめかせてしまう。

僕は、学校でやりたくもない勉強をする時間が無駄だと思った。勉強は必要ないんだと。

シカトされた記憶が消えなくて、学校そのものが嫌いになってしまったというのも正直ある。

そんな学校の代わりに通った場所は楽器屋だ。店員さんと仲良くなって、色んなギターを弾かせてもらった。

連日、そんな日々を過ごしていたものだから、僕は中学生とは思えない技術を身に付けていた。

気付けば1年が経ち、中学3年生の夏休みがきた。エアコンのない小部屋で、僕はいつも通りに汗を掻きながらギターを弾き倒す。

そんなある日、親友のタカシが家に来た。タカシは、僕をシカトしなかった唯一の人だ。


「中平ー!遊びにいこーぜー!」


------その日を皮切りにね、毎日タカシと一緒に遊ぶんだ。夜通し、色んなイタズラをしながらね。

そしたら、学校にまた行きたくなったんだよ。学校に行かなきゃタカシと遊べなくなっちゃうからさ

だから、3年の二学期の登校日はタカシと一緒に登校したよ。やっぱり一人じゃ行きづらくてね。 

学校に到着するや否や、君は先生に呼び出されて怒られる事になるよ。まぁ、仕方ない。だって、金髪だからね。

それで、受検の時期がすぐ来るんだけど、通知表には「測定不可」の判子が押されてるから、なんか色々面倒臭くて。

で、結局、通信制の高校なら行けるってなったんだけど…… 

  

「亮が高校へ行くなら金が掛かる。だから、離婚は先延ばしにする」 


そんな両親の会話が聞こえてね。ほら、両親めっちゃ仲悪いじゃん?だから、僕は早く別れて欲しくてさ。

「俺、ミュージャンになるから高校行かない」

「就職に影響?うるせーな!ミュージシャンになるって言ったろ!」

高校に行かなければ、離婚してくれるって思ったからさ----------

そんな僕の予想は的中。両親は僕が中学を卒業してすぐに離婚した。

普通、離婚は悲しい事のはずだけど、もうあの悲しい喧嘩を目にする事がないと思うと、僕は嬉しくて仕方がなかった。

そうして僕は、高校へは行かず、ガソリンスタンドで働く事を選んだ。

働きながら、バンド活動を一生懸命に頑張ったのだ。

そして、二十歳になる頃には、僕のバンドは全国ツアーを回るほどに成長していた。

僕はギターではなくボーカルだった。作詞作曲と歌が、バンドでの僕の役割だ。

メンバーの演奏力は、はっきり言って高い。上手なのだ。 

全国、何処のライブハウスに行っても自慢のメンバーだ。

ライブハウスの関係者は皆、口を揃えてこう言います。


「このバンドは、ボーカルが上手かったら間違いなく売れるね」 


そう、僕は歌が下手くそだった。


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