一年間の浅いい話第四回
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今となってはもう昔の事ですが、大阪のやさしいおばさまの話はまだまだ続きます。すでに飽きてこられたかたも大勢いるかとは思いますが、一応すべてを書き尽くそうと思っておりますので、これまですべてに目を通された方はしばしおつきあいを願います。すでにこの話がでっち上げだなどといぶかっている方も大勢いるかとは思いますが、そんなことはありません。すべて本当に起きた話でありまする。
これまで、A、B、Cと登場したおばさまたちの話は、実際尽きることがないのですが、取り急ぎはおばさまDの登場ということで。おばさまDはもう一人の深夜フロントスタッフです。なにをかくそう私が初めて深夜のフロントなるものを経験した時にご指導してくださった恩師でもあります。それはいいのですが、おばさまDは年にそぐわずかなりのアニメ声で、何遍話しても実際に本人が話しているのかどうかすら疑わしくなるほどの、超アニメ声です。それはいいのですが、行動もアニメキャラチックです。おばさまDと仕事をしていると、まさしくアニメの世界に入り込んだかのごとく、仕事に対する熱意が奪われてしまします。いえサラリーパーソンとしてのすさんだ心を和ませてくれました。
ある事情からというか別にかくすことでもないのですが大っぴらにすることでもないので、ある事情から、私は筋肉質の身体をしています。それを風の便りに耳にしたおばさまDは、ある日突然「ちょっと見せて」などとせがんできました。勤務中にです。普段は慎重に慎重を重ねる私ではありますが、なにせアニメ声なもんで、現実味に欠ける声で頼まれたもので、うっかりとシャツをめくってお披露目したところ、おばさまDは「キャー」とその時も大きなアニメ声で騒ぎ出して、どこぞへと消えていってしましました。まるで私がセクハラ下みたいになってしまって、おばさん、もしくはおばあさんで占められている職場でしたので、それほどの問題にはなりませんでした。とはいえ、しばらくの間、おばさまDは帰ってきませんでした。ただのさぼりだったようです。
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