9月の1話 ボス帰還

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ボスがバカンスから明けて、私は自分の素晴らしく修正された論文をじゃじゃん、と見せたかったが、それは叶わなかった。

 ミーティングのとき、ボスに言われた。「あれもこれもと欲張ってはダメだ。自分で何か分析する基準を作るんだよ。何でもいいんだ。それが君のオリジナリティだ。今が、まさにトレーニングする時期なんだよ。」

 私は、考えた。初めて、こんなに深く考えた、というくらい考えた。何を基準にして説明したら、意味のあることが言えるだろうか? どのように言いたいことを分けたらいいだろうか? オフィスでパソコンの前に座っていたのではいいアイデアが浮かばない。私はよく、コートを羽織り、オフィスの外に出て、ひんやりした風に吹かれながら、遠くの丘で放牧されている牛を見たり、首をすくめてじっと足元の芝生を見たりしながら考えていた。初めて、これは頭脳仕事だと思った。自分の全ての知見を合わせて、どう分析するのがベストか、どう説明するのがベストか考えるのだ。生み出すのだ。まさに、生みの苦しみだった。

 簡単には答えが出ず、9月一杯が経過した。早く私が仕上げて、ボスにアドバイスを請うた方が早いのは分かっているのに、まとまっていないものを出すことが出来ずにずっと自分で持ってしまっていた。今思えば、他にやりようがあったかも知れない。しかし、あのときの苦しみ、分析の基準を一人で分析したことは、後々私の自信になった。

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10月の1話 Your idea is not bad.

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