36歳。不妊治療中に心身ボロボロになり卵巣年齢40歳と診断された私が「こんまり流片づけ」をしたら2週間後に妊娠した話

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医師の言うとおり、このまま体外受精を受けて本当にいいのか?

そもそも、誰が妊娠したいのか?妊娠するのは誰なのか?

それはまぎれもなく自分なのだ。

そして今回は自分ひとりではない。妊娠は夫婦の共同事業である。

「医師に妊娠させてもらうのではない。自分たちが妊娠するんだ」

という意識に切り替わった。

さらに情報収集をすることにした。

結局、いままではどこか他人事だった。

妊活に正面から取り組むのが怖かったから。その勇気がなかったから。


その背景には、数年前のうつ病の治療があった。

当時不眠・うつ病だったわたしは、心療内科を訪れた。


だが医師の対応は毎回適当なカウンセリングと、ただ薬を出すだけだった。

症状は一向に改善せず、わたしはその医師に腹を立てて転院した。

だけど転院先でも対応は同じようなものだった。

医師に、

「わたしはやりたいことがたくさんあるのに、この病気のせいで全てがストップしている。

なんで病院に行ってるのに、飲みたくもない薬を飲んでるのに、良くならないのか?

やりたいことのうち、これとこれは少しずつやってもいいか?」ということを言った。

要は、医師を責めたのだ。症状が良くならないのを医師のせいにしたのだ。

それに対し医師は、

「そんなことは自分で決めてくださいよ。わたしはあなたの親じゃないんだ。

わたしがOKを出してそれで症状が悪化したら、わたしのせいになるの?それはおかしいでしょう。

あなた、依存してるよ」と、きつい口調で言った。


電撃が走るほどのショックと、自分の甘さを思い知らされた瞬間だった。

医師に病気を治してもらうのではない。病気を治すのは自分自身なのだ。

周囲のサポートは受けても、最終的には自分自身がその責任を負う。

当時大ヒットした本、「嫌われる勇気」にもあった「課題の分離」である。

とにかく当事者意識が大切なのである。

その後とことん自分と向き合い、うつ病の根本の原因を自ら見つけることができた。

そして周囲の人たちのサポートを受けてうつ病は改善した。

当事者意識が大切。

そのことを思い出させてくれた、うつ病の自分に感謝した。


購入した妊活雑誌を読み込んでみて、新たな発見があった。

自宅近くの体外受精専門の病院の取材記事が載っていて、ビックリしたが心強い気持ちになった。

その病院の体外受精説明会の予約をしたし、いずれお世話になると思っていたからだった。

だけど注目すべきは、他の病院の取材内容だった。

 

「出来るだけ自然に近いかたちで妊娠してほしい。

体外受精は最終手段。タイミング法や人工授精ではどうにもならない人にトライしてほしい」

という感じの内容だった。


考えてみればわたしたちはタイミング法すら、満足に取り組めていない状態だった。

2014
9月は夫の出張でタイミングを逃し、

10
月は排卵日が予想外に早すぎて間に合わず、

11
月は夫婦でマラソンイベントに参加したためタイミングを逃し、

12
月はわたしがやさぐれて通院をサボり、

結局一回もできていなかったことに気がついた。

 

<二人で同じ方向へ>

その後2つの病院で体外受精の説明を聞いたわたしたちは、

「不妊治療は戦略的に取り組むことが重要」というキーワードを深く理解したように思う。


体外受精専門のクリニックの説明会は、満席だった。

ざっと12組はいただろうか。

わたしたちより明らかに若いカップル、同じくらいの年のカップル、40歳くらいのカップル。

こんなに体外受精を検討しているカップルがいるなんて。

ここでも自分の価値観が崩れた。


不妊治療はギャンブルだ。

タイムリミットがあるなら、なおさらだ。


体外受精をすれば高い妊娠率で妊娠できる。

でも負担が大きい。それに必ず妊娠できるわけではない。


自然に近いかたちであれば、負担は軽いけど妊娠率は低い。

ここまでくると正直、「自分の子どもの顔が見たい」とか、「自分の子どもに会いたい」といった感情はなく、

ただただ、「このタイムリミットがある一大ミッションを、いかに攻略するか?」という意識になっていた。

「体外受精は確かに費用もかかるけど、80万円程度で子どもが授かるなら安いもんじゃん?」とまで思うようになっていた。


夫と真剣に話し合った。

「タイムリミット」という言葉に、夫は過剰に反応していたように思う。

短期決戦となると男性らしさを発揮するのだろうか。

夫婦で話し合った末、「体外受精に進む前に3ヶ月程度、人工授精を受けてみよう」という結論になった。


思えばこの頃から、夫が妊活に深く関与するようになったように感じる。

今まではわたしが全てを決めて報告して、大抵「それでいいよ」「任せる」という返事しかなかった。

妊活以外でもそうだった。

こっちはもっと関わって欲しいのに。

実際このとき、わたしはタイミング法を押した。

でも、「タイミング法より少しでも妊娠確率の高い人工授精にしよう」と人工授精を強くプッシュしたのは夫だった。


とにかく、「ダメもとでも後悔しないようにやれるだけのことをやろう。納得してから体外受精に進もう」ということになった。


年が明けて休暇を取り、片づけをして余計なモノ、仕事、人間関係を手放した。

同時にそれまでめちゃくちゃだった生活を整えた。

温活をした。

毎朝夫とウォーキングに出かけ、帰宅後に和朝食を食べた。

妊活にいいと言われるサプリメント等を飲んだ。


一度大きく乱れたホルモンバランスは、戻すのに時間がかかる。

体外受精をする前に整えておきたかった。

整えるのに最低でも3ヶ月程度はかかると思った。

だからこの期間は適度に積極的な妊活もしつつ、色々整える準備期間だと思った。

 

<最初の一歩>

一回目の人工授精の日が決まった。

それが20151月の後半。


生理3日目の診察では、FSH値は前回よりは改善していた。

だけど依然として良好ではなかった。

人工授精前日の診察では、子宮内膜は11ミリ程度とまあまあ厚くなっていた。

卵胞は18.5ミリまで大きくなっていた。

子宮内膜は厚ければ厚いほど妊娠率は高くなる。

卵胞は18ミリ~20ミリになると破裂し、排卵する。

体は「妊娠したい」と言っているように思えた。

あれだけムチを打ってボロボロになったというのに、ちゃんと応えてくれていることが嬉しかった。

約2週間という短期間とはいえ、体をケアした成果が出た気がした。

「わたしの体って結構強いなあ」と思った。


排卵した卵子の寿命は2448時間なので、それまでに精子が到達する必要がある。

精子の寿命は3日程度。

妊娠可能な期間は排卵日3日前~排卵日翌日までの5日間。その期間にタイミングを取る必要がある。

「妊娠確立が最も高いのは排卵日2日前。次いで1日前、排卵日当日」というのを、以前何かで知った。

準備期間の妊活なのでまったく期待してなかった。

だけど少しでも妊娠率を上げるため、夫と「人工授精前後にも自分たちでタイミングを取ろう」という話はしていた。


人工授精の処置はあっという間に終わった。

朝イチでクリニックに行き、血液検査でホルモン値をチェック。

夫の精子が入った容器を看護師さんに渡し、洗浄処理をしてもらう。

その後処置室にて仰向けに寝てエコーで内診。

医療用チューブで精子を子宮内へ注入。

処置後はそのままの姿勢で15分程度安静にする。

最後に着床(受精卵が子宮内膜に潜り込むこと。子宮の正常な位置に受精卵が着床することにより妊娠成立となる)を助ける、黄体ホルモンの注射をお尻に打ってもらって終了。

痛みはなくリラックスして臨めた気がする。

※注射は筋肉注射だが、打つ箇所をつまんでもらえば痛くない。腕よりお尻がおすすめ)。


人工授精後に今回の精子のデータをもらった。

驚くことに数値が大幅に改善していた。

もう問題のある数値はない。

漢方の威力は偉大だった。


だが処置後にエコー写真を渡され、「もう排卵してますね」と医師に言われた。

え?もうすでに排卵しちゃってたの?人工授精のタイミング、ちょっと遅かったんじゃ?

でも今は準備期間中だし、医師も有効だと判断して処置したんだし、まあいいかと思った。


それにダメもととはいえ、わたしたちは人工授精の前後で自分たちでもタイミングを取ることにしていた。

人工授精の前日と、当日の夜。計2回タイミングを取った。

「排卵日に人工授精を受け、その前後でタイミングを取る」という、今までで一番義務的な営みだったが、焦りも不安もなくとても穏やかに感じた。


人工授精の妊娠確立は10%程度。

自分たちの年齢や今の状況を踏まえて、今回の妊娠確立は多く見積もっても15%程度だろうか。

まあ、期待はしてないけども。


<マクトゥーブ?>


医師曰く、「人工授精後5日間は激しい運動は控えるように」ということだった。

困った。激しくはないけど仕事であるマッサージサロンの予約が数件入っている。

医師にOKか電話で確認したところ、「大丈夫だと思いますが自己責任で」とのことだった。

心配だったけど断るわけにもいかず、普通に営業した。

断ったところでどうせ妊娠しないと思っていたからだった。



それから不思議なことが起きた。

その後のサロン予約が、ことごとくキャンセルになった。

また、サロンに興味を持ってくれた方たちから数件問い合わせがあったのだが、予約は保留になった。

サロンの予約以外にも、友人との約束が次々とキャンセルになった。

夫に話したら、「マクトゥーブだね」と言っていた。

「マクトゥーブ」とは、小説「アルケミスト」に出てくるアラビア語。

「それは書かれている」と訳される。

「起こりうる物事は既に大いなる手によって書かれている。それは最初からそうなるべき物事であった」という意味だと言う。

そういうことなんだろうか?



生理予定日になった。

生理は来ない。来る気配がない。

でも期待するのはやめた。今まで期待して、散々裏切られて悲しい思いをしてきたからだ。



2
月上旬、夫婦で旅行に行った。

何もしない贅沢を味わった。

純粋に幸せを感じた。



旅行中、腹痛があったり胸の張りが弱くなったりした。

あー、やっぱり生理くるんじゃん。なんて思ってた。


だけど、来なかった。


<宝物>


生理予定日1週間が過ぎ、一応妊娠検査薬を買ってきた。

結果は分かってたけど使ってみた。



すぐに陽性反応が出た。

分かってたから特別驚かなかったけど、少し安心した。



喜びもつかの間、その直後にほんの少しだけ出血があった。

次の日にクリニックの予約をしていた。

時間指定の予約が取れなかったので、何時に来院してもOKの予約外外来になった。

待ち時間はあるが仕方ない。

翌朝、起きてからウォーキング中もずっと左下腹部痛があった。

帰宅後いてもたってもいられず、朝食は作らずに適当なものを口に入れて家を飛び出した。

子宮外妊娠かもしれないと思ったからだった。



妊娠検査薬で陽性反応が出たことを医師に伝えると、嬉しそうにしていた。

だけどわたしは不安でしょうがなかった。

内診したところ、子宮に小さな黒丸が見えた。

「胎のう」という赤ちゃんが入った袋だった。

子宮外妊娠ではなかった。安心した。


<あとがき>

最後まで読んでいただきありがとうございます。


今後子どもを望む方や、今子どもを望んでいる方にわたしが声を大にして伝えたいことがあります。

それは、「女性の生殖能力にはタイムリミットがある」ということです。

何も、「今すぐ妊活をしろ」だとか、「焦りなさい」とか言いたいわけではありません。

「意識」を持っていただきたいのです。

意識があるだけでも、考え方や行動が変わってきます。

 

そして今ご自身が取り組めることに、少しずつでいいので行動を起こしていただきたいと思っています。

 

例えば、

・体を大切にする。体の声に耳を傾ける。

・温活をする。

・パートナーと、セックスや子どもについて話し合う。

・不妊治療を受けるかは別として、とりあえず不妊検査をする。

・妊娠の正しい知識をつける。

などなど。

 

わたしはそれを怠ってきたせいで、大変な思いをしました。

 

今でこそ「妊娠はその人のタイミング」と言えるのですが、現実問題として「女性の生殖能力にはタイムリミットがある」ことは否めません。

 

不妊治療はきついです。今回たった1年間の自己タイミングでの妊活+約5ヶ月間の不妊治療をしたわたしでさえ、そう実感しています。

 

こんな思いは正直しなくていいと思います。

だからぜひ、「意識」を持っていただきたいです。

 

でも焦りは禁物です。どうか変に焦らないでいただきたいです。

焦ってしまうとうまくいくものもうまくいきません。また、焦ると大切なものを見失ってしまいます。

子どもの前に、まずは自分とパートナーありき。自分とパートナーを大切にする余裕も持っていただきたいです。


実際、今回の私の勝因は、

・人工授精時、焦りも不安もなく精神的に余裕があった。

※本番前(体外受精前)の準備期間の妊活と割り切り、ダメもとで臨んだ。


・片づけをした。ギチギチで隙間なく抱え込んでいた余計なモノを手放し、本当に必要なモノ・仕事・人間関係だけを残した。その隙間に赤ちゃんが降ってきた。

・片づけ後、温活、運動、食事、サプリメント等で身体を整えた。

※短期間で結果が出たのは、片づけによって体だけでなくメンタルも整えられたからだと思う。


・夫と向き合うことにより、夫婦が一つになり同じ方向に進むことができた。

※男友達を手放したことにより、エネルギーが夫に集中された。

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