2-5.アホ、巻き込まれる
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2-4.アホ、もっと加わる
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2-6.アホ、バタバタする
『南相馬ダイアログフェスティバル』の日、会場にある男が来場者としてきていた。
その男は、南相馬の人とは明らかに違っていた。ヨガでもしているのかと思えるような体つきに、少しサイケデリックな服を身につけ、ただならぬオーラを身にまとっている。
会場で一瞬見ただけで
「この人何者だ?」
と思え、その姿が頭に焼き付けられるほど、強烈な印象を持った男だった。
その時はそれだけの関わりだったが、フェスティバルが終わった翌日、私のいる『まちなかひろば』の『べんりDaDo』にその男はいた。
その男は『アリー』と名乗った。
話を聞くと、震災後南三陸で復興支援の市民活動に関わっていたそうだ。その活動がひと段落ついたので南三陸を離れ、何かして南相馬に来たという。そうしたらたまたま『南相馬ダイアログフェスティバル』がやっていたので、参加してみたらしい。
どういう活動をしてきたのかは分からなかったが、どうやらこの男も南相馬に惹かれたようだ。
その後アリーはしばらく『まちなかひろば』を根城にし、南相馬に滞在する。私はこのアリーと行動を共にする事になる。
それから2~3日経った頃だろうか。アリーが、私と同じく南相馬にダイアログに参加していた、通称ザックと共に私のところにやって来た。
そしてこんな事を話し始めたのだ。
『子どもの遊び場が無くて困ってるんだろ?だから遊び場つくろうぜ。』
…こいつらは何を言ってるんだと思った。遊び場をつくるって、どこにどうやって?
聞けば、こういう計画らしい。
“学校が春休みの間、屋内の広い場所を借りて、そこに子供達を自由が遊べる事が出来る遊び場をつくる”
更に話を聞いていくと、もう既に遊び場をつくる会場のアタリもつけてあって、そこを借りる算段も役所としているとの事。
何だこのスピード感!
アリーはこの2~3日の間に、市役所のキーマンと繋がり、イベントの企画をつくり、会場を借りる交渉をし、おまけにイベントを市と共催にする(これは非常に異例な事)ところまで事を進めていたのだ。
その上で私に『人手が必要だから手伝え』という事を言いに来た訳だ。
今すぐ手を着けなきゃならない大問題があって、しかもここまでお膳立てしてもらっておいて、『私はやりません』なんて返事は有り得ないでしょ。しかもとてもオモロそうな話だ。
オモロくて問題解決に取り組めて、しかもこうした企画を実現するためのノウハウも学べる。
これ…誰がやるって…自分しかいないんじゃねえか。
ここでも『アホ力』全開の『勘違い』が発動する。
ここで『遊び場をつくる』という新たなプロジェクトがはスタートしたのだが、この時のメンバーはアリー、ザック、私の人。全員アラフォーのおっさんである。しかもザックと私に至っては独身で、子供と触れ合った経験も親戚の子供と遊んだくらいだ。
しかも、この話をしてる時点で、イベント開催をもくろむ学校の春休みまで残り時間は2週間。
ホントにやれんのか?
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