第3話 パパが女(アリッサ)になったとき LA発LGBTトランスジェンダー家族日記
(今、わたしのなかでアリッサはすっかり女性であり、3人称では「彼女」なのです、カミングアウト以前と直後を語るときは「彼」とか「夫」という言葉をつかいますね)
娘たちから父親がトランスジェンダーだと聞かされ、携帯で仕事中の夫に事実を確認した日の夜。
娘たちの就寝後、夫と話し合いました。自分の本来の姿に気付いたのは6年前に始めたヨガがきっかけだったそう。
ヨガを通し、自分と向き合うことで次第に自分が間違った身体で生まれ育ったことに気づいたそうです。
思い返すと不審なことばかり。
最初の異変に気づいたのは、夫がペディキュアを塗りだしたとき。ある朝、次女がわたしにこっそり耳打ちしたのです。
「ダディが足の爪ペイントしてるよ」
バスルームのドアを開けると、トイレの便器に座り、ペディキュアを塗ってる夫がいました。
びっくり仰天して理由を聞く。
「今どきのスポーツ選手やセレブはみんなしてるよ、爪のキューティクルを守るためだよ」と夫。
足の指にはご丁寧にシルバーのトーリングまでしてました。
瞬間、当時MTFとカミングアウトして世間を騒がせていた、ブルース・ジェンナーの姿が脳裏をかすめて、じわじわとした不安を感じたのを覚えています。
ネイル事件の頃から服装も徐々に中性化していきました。ホットパンツ姿にロングブーツを履いたり、髪の毛伸ばしたり。ヨガの服装もカラフルで女性っぽい格好が多くなりました。
ただ服装に関しては当時夫がはまっていた「日本人バンドの影響かな?」とあまり深く考えないようにしてました。
当時巷では「メトロポリタン男子」という言葉がもてはやされ、ファッションや身だしなみにこだわりを持つ男性がテレビや雑誌で頻繁に取り上げられてました。
「ここは自由の国、アメリカ。ファッションに関しては夫が好きなようにすればよい」とあまり深く考えないようにしてました。
ただ、外食したときに小さな女の子がホットパンツにロングブーツ姿の夫を指差して「あの人ヘンだよね」と呟いたときは、ショックでした。
「どうか娘たちに聞こえていませんように」と胸のなかで祈ったこと、今でもよく覚えてます。
次回もカミングアウトまでの夫の変化を書きます。
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