第5話 パパが女(アリッサ)になったとき LA発LGBTトランスジェンダー家族日記

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第5話 カミングアウトまで(3)
 
 
「命短し 恋せよ 乙女 紅き唇  褪せぬ間に」

コスプレにはまってる最近のアリッサ。かつらを被って、カラコン入れて、念入りに化粧すると、バービー(人形の)よりキュート。男性がみな振り返ります。
 
 
 
 

 

あ、また涙でそう。男前父ちゃんとわたしが呼んでたころのアリッサ。今見ても、ほんとかっこいいな。大きくてごっつい手が大好きでした。

 

 

 

前回の続き。

わたしをどん底に陥れる事件が続き、夫がカミングアウトした後に…

 

 

 

夫に対して聞きたいことは山ほどありましたが、まずどうしても知りたかったのが、なぜ私に一言も相談せず、娘たちに打ち明けてしまったのか。娘たちは当時まだ7歳と9歳でした。

 

「なぜ、私に先に話してくれなかったの」

「どうして、カミングアウトするのを娘たちがもっと大きくなるまで我慢できなかったの?」。

 

 

「どうしても言い出せなかった。勇気がなかった。離婚されて、愛や娘たちを失うのが怖かった」と夫。



 

これは痛かった。娘からの報告でノックアウトされ、さらにその切り傷に粗塩を擦り込まれるような痛みに、心と脳が悲鳴をあげました。

 

1997年に知り合い、20年近く一緒にいたのに。こんなに重大なことをわたしに一言も相談できないほど、夫婦関係は壊れていたのだなと改めて気付き、悲しみが一層増しました。

 

 

 

娘たちが成人するのを待たずにカミングアウトしたのは、当時通っていたカウンセラーやトランスジェンダーの会のアドバイザーに「年齢が低ければ低いほど、子供たちはトランスジェンダーの親の変化を受け入れやすい」と助言を受けたからだとか。

 

 

 

彼の説明が耳にはいりませんでした。自分の「女性になりたい」という欲望を押さえきれず、私に相談もせずに小学生の娘たちに打ち明けてしまった彼に絶望しました。

 

 

 

前にも書きましたが、「今まで我慢し続けて、つらかったんだろうな」といった彼への労りの気持ちなどはこれっぽっちも浮かばす、彼のおろかさ、無責任さ、自分勝手さへの怒りで、爆発しそうになりました。


今振り返ると、わたしこそ自己中で残酷でした。ごめんなさい、アリッサ。

 

 

 

 
うちのワン子、ルナ。アリッサがカミングアウトした5ヶ月後の2016年の10月、シェルターからアダプトしました。


おねだりしてほしがったのは子供たちよりもわたしでした。

乾いてガサガサだった心を犬に癒してほしかった。犬の世話して心を紛らわせたかった。

ルナを散歩しながら、そのときの気持ちを大声でうたう迷惑女のわたしですが、当時よくうたったのは、「贈る言葉」の「人は悲しみが多いほど、人には優しくできるのだから」のフレーズ。あとは、玉置浩二の「行かないで」。朝と夜の散歩の時間、泣きながらうたってた。
 
 
 

7歳だった娘が描いたうちのルナ。躾のクラスを取ってもちっとも飼い主の言うこと聞かず、ご近所さんからも嫌われ、「ワルーナ」(悪いルナ)と呼ばれたりする我が家の暴れん坊将軍ですが、スライパン家にはなくてはならない存在。みなが癒されてる。

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