第7話 パパが女(アリッサ)になったとき LA発LGBTトランスジェンダー家族日記

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第7話話 私たち夫婦について(2)
今回は、トランスジェンダー (MTF)とカミングアウトするずっと以前の、パートナーとわたしの新婚時代から。
 
 
 
カミングアウトしてから、新しい友人が増えたアリッサ。
 
コスプレのアドバイスをしてくれる友人、特殊メーク(?)してくれる友人、一緒にコンサートやイベントに行く友人。
 
わたしはコスプレの世界にはまったく無関心で、アリッサの新しい友達にもコスプレフレンズにも会ったことないけど、それでもまったくOK。カミングアウト前より、楽しそうでよい。
 
 
新婚の頃のわたしたちの関係について。
 

付き合った当初から 「かかあ天下」。優しくておっとりした彼を、完全に尻にしいていました。彼の優しさに甘え切って、好きなことを好きなようにさせてもらっていました。優柔不断なところがある彼は、私の決断力とか押しの強さに、惹かれていたと思います。少なくとも、子供ができるまでは 。

 

 

私は大学卒業後、日系の出版社で営業や編集の仕事をしていましたが、結婚して永住権が取れたので、出版社での仕事を辞め、好きなことにチャレンジすることにしました。 

 

 

料理が大好きだったの、当時、ベニスビーチに開校したばかりの寿司職人養成学校に通い、夜は和食のレストランのキッチンで調理の仕事をしました。

 

 

帰りが夜中を過ぎ、週末出勤も多かったのに、彼は文句ひとつ言わず、応援してくれました。今振り返ると、彼の優しさと弱さにつけ込んで、わたしは自由を謳歌し、自分のやりたいことに突っ走っていた気がします。職場の日本人男性たちからは「自分だったら、嫁にそんな好き勝手なこと絶対させない」と言われていました。

 

 

彼はアメリカ最大規模の商業不動産の会社でコンピューター管理をする仕事に携わり、午前8時から午後6時までの定時の仕事をしていました。

 

 

時間的にすれ違うことが多くなりましたが、一緒に過ごせる時間を大切にし、愛情溢れる夫婦生活を送っていたと私は思います。自分のやりたいことが山ほどあったし、ふたりの時間を楽しみたかったので、子供がほしいとは思いませんでした。

 

 

夢に描いていたような理想の結婚生活でした。彼は私の好きなことを好きなようにさせてくれたし、仕事の休みの日は海、山、ハイキング、ワイナリー巡り、など南カリフォルニアならではの生活を満喫しました。


順風満帆の結婚生活でしたが、私には大きな気がかりがありました。彼と私の経済感覚がまったく違っていたのです。

 

 

わたしは共働きのあまり裕福ではない家庭で育ちました。幼い頃から必死に働く両親の背中を見て育ち、働いて貯めても楽にならない生活というものがあるのを身にしみて知っていました。

 

 

両親とも贅沢を好まなかったせいか、わたしもブランドものや高価なアクセサリーにはまったく興味なし。両親が懸命働いて貯めたお金で留学し、卒業できたので、卒業後は絶対親に負担をかけないと肝に命じていました。

 

 

一方彼の父親はオハイオ州で整形外科医院を営んでおり、彼は裕福な家庭でなに不自由なく育てられました。オハイオの学生時代もその当時の学生には珍しく、自分の車を持っていたし、ブランドの服や時計が大好きでした。

 

 

就職後は、自由に使えるお金ができたせいか、車の改造や楽器など、趣味にかけるお金がどんどん増えていきました。

 

 

散財、浪費癖はなかったものの、実は私もお金の管理が苦手で、家計の管理は英語が母国語だからという理由(言い訳)ですべて夫に任せていました。

 

 

後に買い物依存症であったことがわかったのですが、夫はネットショッピングで次から次へと不必要なものを買い込んでいました。

 

 

購入したものは私にわからないよう、オフィス宛に郵送させていたようです。それでも自宅の彼の一室に物がドンドン増えていくのは一目瞭然で、彼の浪費癖について私が話し合いの場を設けようと試みたことは何度もありました。

 

 

ただ、彼はお金のことになると口を閉ざし、自分の殻には閉じこもってしまうことが多く、話し合いになりませんでした。

 

 

彼の心のなかに大きな空洞があって、物を買う事でその空洞 を必死にふさごうとしている感じがしました。

 

 

彼の実家が裕福で、義理の両親が彼のために貯蓄と投資をしているのを知っていたので、彼の買い物の資金はそこから来ているのであろうと憶測し、わたしも問題解決を回避していました。

 

 

今、思い返してみると、大切な事を面と向き合ってきちんと話し合うことが怖くもあり、面倒でもあったのです。

 

 次回のは、出産後からのわたしたち夫婦の関係の変化について書きます。

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