今でも私の支え。犬のピピの物語(3) すとんと眠りの国の子犬

前話: 今でも私の支え。犬のピピの物語(2)第一章 魔法のはじまり 宇宙耳と傷がついた子犬
次話: 今でも私の支え。犬のピピの物語(4)海の草原
(次話をアップしたらこの話と繋がっておらず、削除して再掲しました。せっかくいただいていた「読んで良かった」も一緒に消えてしまいました。たいへん申しわけありません(TT)    Akiko HS)
 帰りみちは、たいへんでした。
 まず、道がわかりません。店には、車をてきとうに運転して着いたから、帰りみちも、ぐうぜんです。太陽と影で、方向だけきめて走ります。
 その車の助手席の、ダンボールの箱の中で、ピピはがさごそあばれました。あぶないので、箱を床において、小さな怪獣だけ、席にすわらせます。
 すると、ピピはわたしの方に向いて、ちょこんとすわりました。そして、見あげています。
じいっ・・・・・
 と、見つめているのです。
「なあに? なにか、用があるの?」
 おもわず、わたしはたずねました。 
 ピピは、ほんとうに、だいじな、しんけんな話がある、という顔で、長いあいだ、わたしのよこがおを、まじめに見つづけていたのです。

 そのあと、ピピは車の床におろされて、おおよろこびで探検をはじめました。ごそごそ、ごそごそ、ごそごそ、・・・・・。はいまわるようすは、まるで・・そう、ミミズ。みたいですよ。
 つぎには、わたしのくつと格闘(かくとう)しました。でも、わたしのくつは、アクセルやブレーキをふまなければならないので、とってもいそがしいのです。それでわたしは、
「ピピなんか、ぜーんぜんいない。いないのだ!」
 と、自分にいいきかせながら、運転をしました。それから、わたしはずっと、こんな運転方法になったのです。
 遊びつかれると、ピピは、サイドブレーキの奥にあるちいさな敷物の部分で、まるくなりました。ほんのきれっぱしみたいなところでも、ピピには、じゅうぶんな「しきぶとん」なのでした。

 ピピ用品を買うために、わたしは、とある店の駐車場に、車をとめました。助手席を見ると、ピピは、ちゃんとこっちをむいているけれど、目は、ちいさなちいさなふたつの星になっています。その星は、とおい、とおいところにあって、
(ぽつ、ぽつ・・・)
 と、またたきました。
 それで、わたしは、かわいた白いタオルをふたつおりにして、
ふわっ・・・
 と、ピピの上にかざしました。すると、ピピは、ちょうど同時に
すとん!
 とつぶれ、タオルの下で眠りの国へと消えたのです。そう、それはまるで、手品のようにね!


 店からかえってくると、わたしは、車の中でコロッケパンを食べました。カリカリの、茶色い、ほかほかのコロッケです。あつあつの、じゃがいものにおいが、ぷんぷんとたちこめます。
たうっ!!
 目ざめたピピは、ちいさな手足をいっぱいにのばして飛びついてきました。
たうっ!!(「くれっ!!」・・これは、ピピのこころの声。)

 わたしは、さらっとふりはらい、自分だけ食べものをほおばりつづけます。
たうっ! たうっ! たうっ!!(「くれっ! くれっ! くれっ!!」) 
ピピは、なんども、なんども飛びかかってきます・・・
わたしは、心の中でさけびました・・・
(す、すごい、熱意と根性ーー!!!)

 ごしんぱいなく。ピピは、それからすぐに犬用のかんづめのビーフを、それも、大きなのをふたきれも、ちゃんとおなかにしまいこんだのです。

 さて、わたしたちの車から、海が見えてきました。小さな湾に、白い橋がつながりかけています。それは、両岸から手をのばして、もうすこしであくしゅできるところです。その橋が見える、広い埋め立て地に、わたしたちははいっていきました。

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