第38話 パパが女(アリッサ)になったとき LA発LGBTトランスジェンダー家族日記
第38話 わたしが立ち直れた理由
1、気付き
不幸だったのは自分のせい。
人生にふりかかった困難をどう受け止めるかは自分次第。
幸せになりたいなら、まず自分の考え方、行動を変えることからはじめる。
相手を変える、相手をコントロールするのではなく、自分が変わる
これらの気付きが 立ち直りの最大の理由。
2、仕事が好き
マッサージセラピストとしての仕事が充実しており、よいクライエントに恵まれていた。家庭を離れてガス抜きする場所があった。
3、夢があった
マッサージの仕事と同時進行で、わたしは頭蓋仙骨療法とESSENTRICSというストレッチプログラムを勉強しています。夢は独立。自分のスタジオを持ち、これらの要素を取り入れたセラピー行い、クライエントの体と心と脳の健康をサポートすること。将来の目標があり、夢に向かって前進していたので、落ち込んで、撃沈してばかりはいられなかった。
4、娘たち
娘たちはもともと父親を愛し、尊敬していたので、子供たちからよいエネルギーをもらった。できた娘たちに支えられた
5、ママ友
もともと、ママ友との付き合いが苦手。深い付き合いを避けてきたので、カミングアウト後もややこしい、いざこざがなかった
6、両親
双方の両親が異国の地に住んでいるため、親や親戚への気遣いをする必要がなかった。
7、カミングアウト前の関係は冷めていた
カミングアウト以前の関係がラブラブでホットだったら、ショックは計り知れなかったと思う。わたしたちの男女としての関係は冷めかけていたし、セックスレスに近かったので、ラブラブカップルに比べるとショックは少なかったと思う。
8、時が解決してくれた
アリッサのカミングアウトでつらかったとき、わたしが相談相手として頼っていたのは、産婦人科の先生、メンドーサ先生でした。長女も次女もメンドーサ先生に取り上げていただいたから先生とは10年以上のおつきあい 。
コロンビアで生まれ、コロンビア育ちの美しく聡明な女性。人に媚びない。看護婦さんたちにはめちゃくちゃ厳しい。一見とっつきにくい感じがするけど、患者さん思いで実は情にもろい。仕事に対する真剣さが、看護婦をしている母を思わせる彼女を、女性として、職業人として尊敬していました。
男性だったときのアリッサのことをよく知っているメンドーサ先生。久しぶりの定期診断で「パパは元気?」と聞かれ、簡単に報告するつもりだったのに、結局、 すべてを吐き出してしまいました。
ご主人との関係で苦労され、セラピーに何度も通った先生。わたしにこんな話をしてくれました。
絶交、失恋、離婚、死別…
大切な誰かを失ったとき、わたしたちは感情のステージを経験する。
第1ステージ:ショック、否定
第2ステージ:怒り、反発、悲しみ、喪失感
第3ステージ:あきらめ、受け入れ
そして先生は言いました。「すべては時が解決してくれるから、あせらないでいいよ」。「怒り狂ってもいいし、泣き叫んでもいい。でも、夜明けのこない夜はないでしょ。大切な誰かを失って、感情のステージをすべて経験した後、もっと別の素晴らしい人生があなたを待っているから安心しなさい」と。
当時、第2ステージのまっただ中にいたわたしは、先生の言葉に感謝はしたものの、同時に疑問を感じていました。わたしに夜明けは来るのか?時が解決してくれるのか?本当に素晴らしい人生がわたしを待っているのか?
今はわかります。時が解決してくれることを。メンドーサ先生は正しかった。
時が経つに連れ、わたしはトランスジェンダーのパートナーのいる生活に慣れていきました。
周囲の反応に怯えて、不安や恐怖を感じていた時期もありました。でも、自分が思っていたほど、周囲はわたしたちのことを気にしていないことがわかり、また、ぶしつけな質問、反応への対処法も身につけました。
アリッサがカミングアウトしたばかりの頃、服装も髪型も化粧も中途半端、もしくはやりすぎ、盛りすぎで、男性ががんばって女装している感がぬぐえなかった。正直に言うと、わたしも娘たちも一緒に外出するのが恥ずかしかった。
アリッサは化粧を学び、ファッションセンスを磨き、今では一般女性より、もっと女らしくなりました。外出するときも、ママと娘とその女友達(もしくは親戚のお姉さん)といった感じで、誰もわたしたちを振り向いたりしません。
わたしが立ち直り、トランスジェンダーのパートナーを持つことを恥じる気持ちを捨てたとき、娘たちもさらに優しく強くなりました。
次回は「アリッサがカミングアウトしてよかったこと」について書きます。
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