第40話 パパが女(アリッサ)になったとき LA発LGBTトランスジェンダー家族日記

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第40話 カミングアウトして困ること、困ったこと



ポールダンス用の靴。腰痛になっちゃうよ、こんなヒールの高い靴はいてたら。
 
 

アリッサがカミングアウトして困ったこと、困ることは盛りだくさん。ブルーハーツ的に言うと、「いいことばかりじゃないけど、悪いことばかりでもない」。うーん、悪いこといっぱいすぎ。

 

 

鏡の奪い合い

ブスに見える鏡ときれいに見える鏡というのがありますよね。照明の色とか角度の違いかしら。我が家にはすっごい鏡があるんです。「本来の姿より2倍きれいに見える鏡」。

 

それはダイニングルームに隣接したトイレの中にあります。6年前に今の家に越して以来、このトイレがわたしの城というか、縄張りでした。スキンケア、化粧、髪しばりなど朝の身支度は必ずここでする。きれいに見える鏡で身支度すると気分が高揚するから。

 

カミングアウトして堂々と化粧するようになってから、アリッサがこのトイレに侵略するようになりました。アリッサもこの鏡のパワーに気付いていたのですね。そして自分を美しいと思い込みたい気持ちは女なら誰もが持っている。

 

でも、このトイレは、もう何年もわたしの縄張りだった。アリッサの化粧は時間がかかるし、小道具をいろいろ持ち込むから、トイレがごちゃごちゃするし。なので、わたしはとてもイライラします。

 

 

わたしの仕事が増えた

娘たちとアリッサの関係は良好。ふたりともアリッサのこと大好き。でも、なんてったってお年頃。ただでさえ、友達にどう思われるかがとても気になる。本音を言えば、お友達にアリッサのことを知られたくないのです。学校や習い事の送迎は時間の許す限り、父親(昔のアリッサ)に担当してもらっていましたが、今はすべてわたしが運転手。運転大嫌いなのに。

 

 

 

 

 

お金がかかるよ

半端ないです。トランス

ジェンダー専門のセラピーに通っていたときは保険がきかないので、一回のセッション200ドル。週1ペースで1年間通っていたそうです。後から聞かされてました。もう通ってません。

 

ホルモン治療は保険が効くからよいけれど、専門医の検診は保険が効かない。

 

クレジットカード返済地獄以来、カードでの買い物を一切やめたアリッサ。偉い。努力は認める。でも、やはり高級指向で買い物好き。服も靴も化粧品もよいものを買いたい。コスプレはじめたから、衣装代もかかる。ヨガの他に最近、ポールダンスもはじめて習い事にもお金使ってます。買い物依存症のときに買い込んだ高級時計をはじめとした品々を売りにだして、資金にしているけど、いつかは資金も底をつく。その頃までには女磨きの熱が冷めているとよいのですが。

 

 

レズビアンじゃない

Facebookで大好評したにも関わらず、アリッサは新しく出会った人には自分がトランスジェンダーであることを隠しておきたいようです。だから、わたしたちはレズビアンカップルと思われているかもしれない。姉妹、もしくは母娘と思われてるかもしれない。周囲の目を気にしなくなったと言いましたが、やっぱり同性愛者でないのに、レズビアンって思われるのはイヤだな。

 

父親不在

昔、父親だった頃、アリッサは子供たちを外に連れ出し、よく遊んでくれました。サッカーしたり、ビーチに行ったり。女になってから急にインドア派になったアリッサ。たぶんもともとアウトドアは大嫌いなのに、無理して付き合っていたのですね。サッカーに行くかわりに、娘たちに家でマニキュアしてあげてるから、まあいっか。

 

学校で、「父と娘のダンスパーティー」みたいなイベントがあるとき、娘たちはそのイベントについて一切触れません。娘たちの気持ちを想うと胸が痛い。

 

父親だった頃のアリッサが次女と買い物をしていたときのこと。アリッサがスーパー内でトマトソースのはいった瓶を床に落としました。ビンが粉々に割れ、床中にトマトソースが飛び散って、店中大騒ぎになりました。次女にとって、それは忘れられない、おもしろおかしい体験だったようです。カミングアウト後も次女がお友達にそのときのことを語るのを何度も耳にしました。娘は「わたしのダディーがね」、とまるでまだ父親が存在するかのように、昔の出来事を語るのです。

 

今のアリッサのことを友達に語るときも同じ。「ダディーがこんなこと言ってた」「ダディーがこんなおもちゃを買ってくれた」。そんなとき、わたしはとても切なくなって、娘をぎゅっと抱きしめたくなります。我が家にはもうお父さんはいないんだよ。

 

次回はアリッサに直撃インタビュー。

 
 

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