暗黒時代 8

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数日後。 

いつも自主トレをする公園で、俺はカズンズとゴキジの2人に、ディスカウントストアから「曲げた」バイクの手袋を見せた。 

それは革製の、黄緑色した「カワサキ」の手袋と、赤い「ヤマハ」の手袋だった。 


どうしたのかと2人に訊かれ、俺はカズンズと同じ手口を使ったと話した。 


「いくらした?」 

カズンズは、俺の「曲げた」金額に興味があるのか、こう訊いてきた。 




「いくらだと思う?」 

「いいから、いくらだよ!?」 


勿体つける俺に、早く教えろとカズンズが催促してきた。 


「一つ80円」 


「マジかよ!?」 

「スゲーじゃん!」 


カズンズとゴキジが目をまんまるにした。 




カズンズにライバル心を燃やした俺は、カズンズが「曲げた」と言う同じ店に行って、同じ手口でカズンズよりもっと安価で商品を買ってやろうと思っていたのだ。 


俺が目を付けたのはバイクの手袋。 

革製で、一つ四千円前後するものだ。 


「曲げる」に当たって、先ずは値札貼り替えから。 

俺は飲料水のコーナーに行き、安物の250mliterのサイダーの値札を剥がし、グローブに貼り替えた。 

サイダーの値段は、80円だった。 


俺はサイダーの缶に貼ってある値札を、ありったけ剥がし、他の手袋にも貼れるだけ貼った。 

何故、「曲げる」手袋以外にも値札を貼り替えるのかと言うと、万が一バレた時の言い訳のためだ。 


もし、レジのおばさんに不審がられ、店長でも呼ばれて問い質されたら、全部の手袋に同じ値札が貼ってあったよ? と言うのだ。 


俺が値札を貼り替えたという証拠でもない限り、全ての手袋が同じ値札だったから、これが正規の値段だと思って買おうとした。と主張すれば店側は反論出来ない。 

いくらそれが悪質な行為だとしても、俺が犯人かどうかさえ特定出来ないのだから。 

そうすれば、もしもレジで捕まっても、俺はお咎めなしと言うわけだ。 


それと、レジには極力年輩のおばちゃんを選んで並ぶ。 

往々にしておばちゃん達は、商品の値段の相場を把握していない。 


特に、バイクの手袋なんかが一束四千円もするなんて思ってもないはずだ。 

現にレジで何のお咎めもなかったのだから、そうなのだろう。 


もし、ちょっと安過ぎるなと思っても、大体ディスカウントストアは商品の値段設定が高くないから、バイクの手袋の相場なんか知っちゃいないおばちゃんを欺くのなんか朝飯前だった。 



そこまでの段取りをして、俺は商品購入をした。 

お陰で難なく俺は、計八千円する商品を、僅か160円で「曲げた」のだ。 




「スゲーな! この調子なら、もっと他の物も買えんじゃね?」 



遂にカズンズは、カメラの三脚まで「曲げる」と言い出した。 


さすがにそれは度が過ぎると思ったが、数日後、カズンズとゴキジは、またも同じ手口でカメラの三脚を「曲げて」きた。 



味をしめた俺達は更に調子に乗り、 遂には人様の財布にも手を付けるようになっていくのである…。 

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