アホの力 3-1.アホ、道に出会う

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さて、2012年の3月、怒涛のうちに進行していった『みんな共和国』。
実はこれと同時進行で、私の身に重大な事が起こっていた。

『コミュニティカフェ べんりDaDo』事業終了。
『べんりDaDo』の事業が、3月末で終わってしまう。
次の身の振り方を、すぐにでも決めねばならない状態だった。収入が無くなってしまうし、何より私の居場所が無くなってしまう。でも、みんな共和国の開催と重なった激烈な忙しさの中、自分の身の事に向ける時間は無かった。この時点で決めていた事は…

『まぁ何とかしよう』

という事だけだった。今はとにかく『みんな共和国』だ。これをきちんと実現出来たら、次の道も開けるかも知んない。
そうして4月に突入した。もう『まちなかひろば』にはいられない。
当時、一緒にみんな共和国をやっていたザックも、南相馬に団体を立ち上げていて、事務所を構えていた。『まちなかひろば』が使えなくなって、みんな共和国の連中もたまり場をその事務所に移動し、活動していた。その中にはもちろん私もいた。
みんな共和国の遊び場は4月8日で一旦終わるが、みんな共和国自体は活動を続けた。まだまだやるべき事があったからだ。けど、みんな共和国には根城が無く、いつもどこかを間借りしている状態だった。
 

みんなが集まれる活動拠点が要る。
みんな共和国のメンバーだけじゃなく、色んな人が気軽に集まって、色々な事をあれやこれやと話が出来る場。

そこでまた、アリーがアイデアを持ってきた。
『フューチャーセンターってのがあるらしいよ。』
なんでも、様々な所属や志向の人が集まって、新しい何かを生み出そうと、所属や志向を超えて話し合う場が『フューチャーセンター』という場らしい。
もともとは北欧発信の場で、企業や行政機関に属する人が集まって、街や社会の事を話しているとの事。そしてその場には『ファシリテーター』という、場をコーディネートする役割の人がいて、その『ファシリテーター』のもと、色々な話がなされるという。

よく分からない。ふゅーちゃーせんたー?ふぁしりてーたー?
何すかそれ?
でも、よく分からないなりに、この街に必要なものだという事は分かった。
必要ならつくろっか。
…誰が?
…『俺っすか』?

『べんりDaDo』が終わり、次の展開を探している私が、一番身軽だった。
それに、次の展開を探してるんなら、新しい事するには丁度良いじゃん!
それに、何かカッコいい!『フューチャーセンター』に『ファシリテーター』って響きが!

次の瞬間

『やるー!』
と手を挙げた私がいた。
資金もスキルも無いけど。
何故だかよく分からないけど、その時の私は『これが私のすべき事だ』という気持ちになっていた。
“これが私の生きる”道と。

ここでまた、アホ特有の『思い込み』『勘違い』の発動である。
『これはチャンスだ!この街で新しい事を始め、自分がスキルを身に付けるチャンスだ!俺がやらなくてどうする?』

といった具合である。

 

やるとなったら、次は拠点となる場所探しだ。
不動産を借りるための資金は無い。なるべく安くて広くて、しかもボロい場所が良いという事になった。ボロい場所なら賃料が安いし、自分達なりに改造も出来るだろうからだ。
物件探しは苦労するかと思ったのだが、あっさりと良い場所が見つかった。幾つかの場所を見て回り『なかなか無いなぁ』と街を歩いていた時にふと辺りを見回すと、元店舗だった風な場所が開いており、不動産会社の連絡先に看板が掲げてあった。その不動産会社は、私が借りているアパートの管理している不動産会社だった。
そこでまた、アホな私は運命を感じてしまうのである。
『ここだ!』
と。
ボロボロのシャッターの隙間から、金色の光がさしているように見えた。
さて…借りようか。

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