アホの力 3-5.アホ、へこむ

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みみセンオープン以来、休む事なく働いていた私だったが、忙しい事それ自体をストレスに感じる事は無かった。山積みとなる『やるべき事』にやり甲斐みたいなものを感じるという、不思議な感覚だった。まぁこの事は私に限った事では無く、その当時のこの街に共通の感覚だったのかも知れない。南相馬という街全体がハイテンションだった。

だがそんな中にあって、悪い噂の払拭には私なりに気を使った。なかなか払拭出来るものでは無かったが。

こんな事があった。
いつものように私がみみセンで事務作業をしていると、いきなり見ず知らずのおじさんが入ってきて、挨拶も無しにこんな事を言うのだ。

『何だここは!?悪のNPOか!?』
何だこの人は?エライ失礼な人だな。挨拶も無しに人を悪者扱いするとは。っつーか、悪のNPOって何?ショッカーか何かか?
歳の頃は60歳ぐらいの、地元の人と思しき伯父さんだった。『何かご用ですか?』と応対すると…
『何だお前!おっかねえな!』

と捨て台詞を残して立ち去ってしまった。
 

こんな事もあった。
この街で活動する団体のリーダーに挨拶して廻っていた時、とある人からこんな事を言われた。

『この野郎!よそから来て、葬式やってる横でお祭り騒ぎして!出て行け!』
これにはちょっと言い返した。

『この街に必要な事をやってるんです。よそ者にしか出来ないでしょこんな事は。』
その後『お前に何が分かる!』と言われたが、じっくり話したら分かってもらえた。その後その人とは、何かと気にかけて頂くような関係をつくれている。

 

これ以外にもまぁ色々な事が…。
この時期は、私の人生で一番、人から怒られた時期かもしれない。

毎日誰かから電話がかかってきて、そのまま1~2時間怒られる。

しかもよく分からない理由で。
『あの時あんたはこんな事言った!』『この話した時のあんた、一瞬気に入らない表情をした!』『この前『これやって』と言ったのにやってないじゃない!』

といった具合だ。しかしこういう話も、いい加減に聴く訳にはいかない。どんな話も、されるからにはそれなりの理由があるのだ。私やみみセンに対する期待の表れだったり、あてどころの無いストレスのぶつけどころだったり、私がミスをしていたり。なのでそうした話にも、当時の私に出来る限り目一杯向き合った。

だが、へこむ出来事もあった。
みみセンのオープンにも、『みんな共和国』の言いだしっぺでその活動を引っ張ったアリーが関わっていた。
アリーは自分でこうした団体を運営していた事もあり、場づくりや団体運営のノウハウを持っていた。
そのノウハウを持って、私を鍛えてくれていた。様々な書類の書き方や、行動計画の立て方、みみセンのコンセプトづくり等、その指導は多岐に渡った。その指導に付いて行くのは、全くの素人の私にはなかなか大変だった。怒られ怒られしながら、やっとこすっとこついて行っていたというのが実際のところだ。
ところが、アリーに怒られている私を見て、『怒られっぱなしのアイツは使えないやつだ』と陰口を言う人がいたのだ。『やる事はこんなにいっぱいあるのに、ダメなやつだなアイツ。』といったところだったのだろう。

正直これはへこんだ。
一所懸命やってるじゃんか。みんな言いたい事言いやがって…そんな気持ちにもなった。

そんな誰にも言えない気持ちを抱えていたのも事実。だけど、様々な活動に関わり、何かを生み出せる充実感は物凄いものがあった。へこんだ気持ちも、そんな充実感と忙しさが流してくれていた。

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