アホの力 3-7.アホ、ハラを決める

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2012年夏の外遊びへの取り組みが始まった。放射能パニック冷めやらぬ南相馬でだ。
仲間内でも『もうちょい自重しろ』という意見は出たが、『遊びを奪われた子供達がやばいんだ』という危機感はそれ以上だった。

ここでも、アホ特有の『思い込み』が働いたのである。『自分がやらなきゃ誰がやる?』的な思い込みだ。みんな共和国に関わった連中も、十分すぎるほどのアホだったのだ。とにかくやろう。
けど、一体どうやって…?

『この遊び場は安全です』という宣言を出す事など、もちろん我々には出来ない。我々のようなド素人がそんなものを出したところで、批判されるのがオチである。じゃあどうすれば、安心して遊んでもらう事が出来るだろうか。無い知恵を絞って考えた結果、ある考えに至った。

“『安全』と『安心』は別物だよね”
という事だ。データ上は『安全』だとされても、それを持って『安心』だと言えるかどうかは、個人の判断するところになってくる。という事は、個人が判断出来る材料を十分提供する事が重要なのだ。
じゃあ我々に出来る事は何だろう…。

 

遊び場を開く会場は、『高見公園』という公園に決まった。この公園はもともとは防災公園の役割を持った緑地で、『原町無線塔』というこの街のシンボルが建っていた場所だ。道の駅南相馬の西側にある、広さ12,000㎡ほどの広さがあり、子供が思いっきり遊ぶにはもってこいだった。
2012年春の時点で、高見公園は市によって除染されていた。でもその時点で、公園で人を見かける事は無かった。何故なんだろうと考えるに『安心出来る材料がない』からだろうという風に思ったわけである。

だとしたら、やる事は決まってくる。

自分たちの手で納得行くまで放射線量を測り、気になるところは自分たちの手で綺麗にし、その情報を包み隠さず公表する事だ。
どうせやるなら、参加者を広く募って、市民みんなで線量測定をしてしまおうという事になった。自分で見るのだから、安心感も持ち易かろうという事で。
かくして『高見公園クリーン大作戦』と称した線量測定&除染イベントが開かれた。イベントの告知は市の広報で行い、広く参加者を募った。当日は30人ほどの参加者が集まった。広さ12,000㎡の公園を5m毎のマス目に区切って、そのマス目毎に地上5㎝、1m、2mの線量を測り、その数値を公園の図面に落とし込んで『見える化』した。結果が誰にも一目でわかるようにするためだ。そうして作った、放射線量が書き込まれた公園の図面を盛り込む形で遊び場開催のチラシをつくり、あとはチラシを見た人に判断してもらおうとしたのだ。

『子供達に外遊びが必要です』

『高見公園の放射線量はこんな値です』

『我々はここで遊び場を開きますんで、もし良かったら参加してみませんか?』

といった具合だ。

 

ちなみに、このチラシは新聞に折り込んだのだが、問い合わせ先として掲載した電話番号は、私の私物の携帯電話の番号だった。
『抗議の声で火だるまになっても仕方ない』といった感じ。

アホはアホなりにハラを決めて、この遊び場に臨んでいたのだ。
決意というより、何も考えてなかったという方が正解かもしれないが。

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アホの力 3‐8.アホ、自分で自分を褒める

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