アホの力 3‐8.アホ、自分で自分を褒める

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夏の遊び場開催に向けて『高見公園クリーン大作戦』が終わった。我々が測定したところ、地上1mの空間線量が概ね毎時0.1マイクロシーベルトほど、高いところで0.15マイクロシーベルトほどと出た。市もかなり気合を入れて除染をしたと見え、木の幹、落ち葉の溜まっているところなどの近くでも、線量は前述の範囲内であった。それでも、目に付く落ち葉などは綺麗に掃除し、公園内を隅から隅まで綺麗にした。そうしてこそ、外遊びが出来る状態だったのだ。
 

さて、外遊び開催のお知らせのチラシに公園の測定結果と私個人の携帯番号を掲載し、それを新聞に折り込んで市内全域に配布した訳だ。

『抗議の電話がかかってくるんだろうな』と思っていたのだが、果たして…。

結果から言うと、抗議の電話は1本もかかって来なかった。

問い合わせの電話はかかってきたが、どの電話でも

『よくぞやってくれました』

『おおっぴらには手伝えないけど、応援してます』

『有難うございます』

という声はかけて頂けた。
ツィッター等ネットの中では『あいつらは子供を殺す気だ』『子供殺し』くらいのことは言われていたが、南相馬市民からそういった声が上がらなかった事は有難かった。怒られまくる覚悟と、市内をお詫び行脚する心づもりは出来ていたのだけど、たくさんの応援の声を市内の人達から頂けた事は、とても心強かったし嬉しかった。

 

こうなると、気分がぐいぐい上がるのが、アホの特徴である。

例によって開催までの準備は激烈な忙しさだった。特にこの時は、他の仲間は仕事を始めていた。関わりっきりでフルで動けるのは私一人。イベント開催のための行政との折衝や、遊び場で使う用品、材料の手配、チラシの配布、助成金の申請、、準備作業の段取り、公園の近隣住民への挨拶など、とにかくやる事が山積みだ。それらの事柄をこなしながらも、とても充実した気分を味わっていた。
例によって周りからは『段取りが悪い』『仕事が遅い』と怒られながらの作業だったが、内心『俺が怒られながら全部を引き受けてるから、この夏の遊び場は出来るんだぞ。へへーんだ』と思いながら動いていた。誰からも『お疲れ様』と言われないので、そこは自分で自分に『お疲れ』と言ったのだ。それで十分だった。

さて、フル回転で準備はしたものの、本当に『今の南相馬で外遊びしに来る子供がいるのかな』『OKを出してくれる親御さんがいるのかな』という不安はあった。でも、まずは看板を掲げるのが大事だった。
『後ははじめちゃえば何とかなるだろう』と。
 

そして開催前日、この日は、携帯電話に準備作業のための確認の電話が50件も入るほどの激烈な忙しさだったが、何とか準備をやり遂げ、ホッと一息つく私がいた。

『誰も褒めてくれないけど、俺、ここまでよく頑張ったよ!』
と自分で自分を褒めながら。
そんな2012年7月31日。
イベントは翌日8月1日から、学校が夏休みの8月26日まで。
イベント名は

『みんな共和国 手のひらを太陽に!大作戦!!』
暑い夏の幕開けだ。

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