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アホの力 4-16.アホ、『妄想』で楽しむ

Image by Olia Gozha

リハビリと称し、毎日病院の壁や床をピカピカに磨きまくっていた私だったが、入院生活は単調な毎日の繰り返しだ。

楽しいイベントが行われる訳では無いし、飲み会がある訳でもない。


そんな中でも、楽しく過ごせる方が良いに決まってる。


じゃあ楽しく過ごすにはどうすれば良いか。


簡単である。自分が楽しいと思う事をすればいいのだ。

ここで気をつけなければいけない事がある。楽しさを『前向き』に探そうとしたところで、それは見つからないという事だ。『そんな事は無いだろ』と思われるかも知れないが、少なくとも私にはそうだった。

例えばリハビリの『楽しい側面』に着目しようとすると、リハビリを『楽しいと思い込む』作業が必要になる。自己暗示をかけて、『リハビリは楽しい』と思うように心掛けるのだ。


これは一見効果的なように見えるけど、長続きさせる事が出来ない。効果が、心掛けたその一瞬だけしか持続しないのだ。


それに、心がけようとするとすぐに心が疲れてしまい、却って気持ちが落ち込む。何一つ良い事が無い。

ではどうするのか。前向きも後ろ向きも無く、ニュートラルな視点で『入院中何をしている時が楽しい気持ちになれるか』を自分に問いかけるのだ。そうすると、本当に些細な事にまで目が行くようになる。


 


例えば私の場合、楽しい事の一つに、色々な事を『妄想する』事があった。


妄想はこんなやり方で行う。『退院したらあんなもの食ってやる』に始まって、果ては世界の様々な珍品料理を、その土地を訪ねて食っている自分を『妄想する』のだ。この『妄想する事』は眠れない夜など、話し相手がいない時に重宝した楽しみ方だった。

他には『入院患者らしくない格好をする』事も楽しみの一つだった。上下パジャマで四六時中過ごすのではなく、朝起きたら自分の気に入った服に着替え、気に入った靴を履いて院内を移動する。病院に入院しながら、インターネット通販で服や靴を買って、病室に届けてもらったりもしていた、おかげで、見舞客からいつも『入院患者っぽくないな』と言われた。そう言われて密かにほくそ笑んだものである。


病室にノートパソコンを持ち込んで、Wi-fiでネットにつなぎ(もちろん病院の許可は取って)、病室から色々な発信をしたりもしていた。

私のベッド周りは、さながらちょっとしたワークスペースになっていた。


そうやって、入院生活の楽しみ方を自分なりに見出しながら過ごしていたのである。

その様子を『前向きだね』と評してくれた人もいたが、前向きにならないように気をつけた結果、前向きな状態が出来上がっているという事は面白い事だ。

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