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アホの力 4-15.アホ、雑巾掛けに精を出す

Image by Olia Gozha

そんな具合に、安定の入院生活を送っていた私だが、この入院はリハビリ入院だ。もちろんリハビリは毎日行う。


理学療法士や作業療法士がついて行うリハビリは、1日1時間ずつ程度だ。そこではもちろん、歩く練習や日常動作の練習を行う。日常動作の練習とは、例えば風呂に入ったり、食事をしたりする時に行う動作を練習する事で、茶碗を持つ練習や、着替えの練習などをする事になる。

その頃の私は、右手の指が伸ばせない、つまりじゃんけんのパーが出せない状態だった。いくら頑張って伸ばしても、すぐに丸まってしまう。

これは治らないかも知れない。そもそも右手は『廃用手』と言われていたので、動かなくても仕方ないなと思ってはいた。

でも、南相馬に帰って1人で暮らすには、右手が開かないのは何ともマズい。このままではジャンケンで負けっぱなしになってしまう。


ならば指を伸ばせるようになれば良い。そのために、効果の高い方法を行なっていけば良い。それで確実に手が広げられるようになるとは言えないが、それが最善の方法だ。その最善の方法を自分で探す事をすれば良い。

『リハビリは大変だ』とよく言われるが、実はとても単純な構図なのだ。


そこで私がとった方法は『雑巾掛け』だった。

左手で右手をパーの形にし、そのまま右手を雑巾に当て、テーブルや壁を拭く。

パーの形の刺激を身体に与え、それを思い出させるというわけ。


リハビリの時間以外にも、雑巾を持ってアホみたいにあちこちを拭きまくった。

それこそ朝から晩まで。

おかげで、私の部屋の前だけ壁がピカピカになっていた。


これは『リハビリを頑張った』と言えると思うけど、何故頑張れたのかが重要だ。

私は目標を持って、最善の方法を行なっていただけなのだ。

それに、やっているうちにだんだん指が伸ばせるようになってくる。

そうなると、雑巾掛けが面白くて仕方がない。

これが頑張れた理由だ。

『努力』『根性』『辛いリハビリを乗り越える』などという浪花節的な面は、私の場合無用だった。

むしろそういった概念は邪魔だった。


毎日毎日病院内のあちこちを磨き続け、毎朝スクワットをし、暇さえあれば院内をぐるぐる歩き回っていたが、それは『面白かったから』そうしていたのだ。

日々少しずつ出来る事は変わってくるが、それをニュートラルな視点で評価して、自分自身の進歩をちゃんと認めてあげれば、勝手に楽しくなるのだ。


この単純な思考回路も、アホ特有なモノと言えるかも知れない。

そう思った時、私をアホに産み育ててくれた親には、心の底から感謝したのだった。

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