アホの力 4-17.アホ、TVに出る

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前向きにならずにニュートラルを心掛けていたら、前向きな結果が出ているという事を体験し、ご機嫌に毎日を過ごす私であったが、そういう時ってごく稀に、面白い事が降ってきたりするものだ。

私が南相馬で加わっている『みんな共和国』や、運営している『みんな未来センター』は、震災後の南相馬の新しい動きとして、何度かTVで取り上げてもらっていた。その流れで今度は何と、私が入院している様子を取材したいというのだ。
『取材は構わないし、むしろ取り上げてもらえる事は有難い。南相馬の現状を発信する事が出来る』

とは思うものの、果たして私のようなおっさんの入院してる様子なんぞをTVで流して…それは視聴に耐えられるものなのだろうか?
そんな心配をしてみるものの、やっぱりTVで取り上げてもらえるのは嬉しい。
放送局は日本テレび系列の福島中央テレビ、放送番組は夕方のニュース番組『ゴジてれChu』だ。福島ではとても有名な番組。

ホントに良いのかな…?晩飯時の福島の茶の間に、片輪の小汚いおっさんの姿が放送されるって。でもTV局から取材の依頼が来た訳だから…その辺は気にしなくて良いのか?なんて事をつらつらと考えつつ、取材OKの返事をさせてもらった。

取材はゴールデンウィークの初日、病院では取材許可が下りなかったので、外泊中に取材してもらう事に。
春日部の自宅マンションに、福島中央TVのOアナとKディレクターがわざわざ来てくれた。福島の郡山から、渋滞中のゴールデンウィークの道路を使ってだ。
何と有難い事か!
そして、TVカメラが実家マンションに入ってきた時のおふくろの驚きっぷりったら(もちろん前もって知らせていたが)。

自宅でインタビューを受けた後、近所の公園に移動してさらにインタビュー撮影をしてもらった。

杖をつきながら、ヨロヨロと歩く私を、一所懸命カメラを肩に担いで撮影してくれた。歩きながら、

『倒れる前は歩ける事なんて当たり前の事で、特別意識もしてなかったけど、実は歩ける事は奇跡的な事なんだ』

というような話をする。足のどこがどう動いて、どう身体を支え、どう身体を前に進めるか、そしてそれらが全てバランスのとれた働きをするか…こうした事は当たり前ではない。とても価値のある事なんだ。

リハビリは、それらの事が奇跡的な事なのだと思い出させてくれる。

これはとても大事な事だ。

歩きながらそんなことを話したように思う。


ゴールデンウィーク中の春日部の公園には、大勢の子供達が遊んでいる姿があった。

この様子が『みんな共和国』で子供の遊び場に関わっていた俺の心の琴線に触れた。

春日部の公園で子供が遊ぶ光景は、当たり前の光景だ。

でも、震災と原発事故で街としての機能を失った南相馬では、それは当たり前ではなくなっていた。実はそれは奇跡的な、様々なバランスの上に成り立っていた事な訳でそれを取り戻すには、やはりリハビリが必要なのだ。

そんな事をわーっと一気に話した。



Oアナがまた上手に話を引き出してくれる。すると南相馬への想いが、後から後から言葉となって出てくる。
やっぱり私は南相馬に帰りたい。
当時の南相馬では、子供達が気兼ねなく遊ぶ事が出来なかった。関東では穏やかな時間が公園内に流れているのに、南相馬ではそうなっていない。その解消のために何が出来るのかは分からなかったが、何か行動が必要だという事は分かっていた。
それに私も加わりたい。

そのために必要な事は何か。まずはとにかく身体の機能の回復である。
 

このインタビューを受けた事で、私がリハビリをする目的や、目指すべき場所を再確認する事が出来た。

それから半月後、この時の様子がTVで放送されるのだが、私の知らないところで、南相馬における私の周辺の環境がこの放送で変わる事になる。
この辺りの話はまた次の機会に。

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アホの力 4-18.アホ、『仮出所』する

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