ただの石の塊
前話:
ベルトコンベアの前で。
次話:
3ヶ月しか続かない。
埼玉寄りとはいえ、そこは一応都内だった。
一人暮らしをはじめたばかりで、職を失った私は、家賃を稼ぐことに必死で、電気やガスが止まるなんてことはしょっちゅうあった。
寒い日も、水で髪の毛を洗った。
蝋燭を灯して夜を過ごした。
20歳を超えて、はじめてもったクレジットカードで作ってしまった借金の返済も滞りはじめ、督促に怯える日々。
それでも生きていこうと思った。
親には不安をかけないように振る舞った。
こんなことで終わるわけにはいかなかったのだ。
たとえどんな惨めな思いをしても、私の心を支えていたのは、なんの確証もない、ただの信念だ。その頃は信念などと呼べるようなものではなく、荒々しい、ただの石の塊のようなものだったけれど。
そういう日々の中、一本の電話が私を救う。
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