3ヶ月しか続かない。

前話: ただの石の塊
次話: 投げつけられたはさみ。

その電話はかつての上司だった。

新卒1年目に配属された広報部の部長が、独立して会社を立ち上げたのは知っていた。その方には当時から目をかけてもらっていたのだが、私が退職した話をどこかから聞いたらしい。

「アルバイト、やらない?」

ベルトコンベアの前で3ヶ月。とうとうオフィスの仕事につけることになった。

その会社は、共同経営で社長が二人、事務員の女性一人、私の4人。プレス発表会の手伝いをしたり、掲載記事を新聞や雑誌編集社に届けたり、資料を印刷することが仕事だった。

不慣れな業界、不慣れな仕事。

それでも、ラジオを聴きながら昼間一人でオフィスにいる時間は楽しかった。

そんな日が続いていたが、相変わらず生活は困窮していて、経済的な不安定さが精神も不安定にさせはじめた。

自分では隠していたが、きっと顔や態度にでていたのだろう。

アルバイトをはじめて3ヶ月。

「キミはもっと安定する仕事についたほうがいいかもね」

と、社長に言われてしまう。

内心わかっていたことでもあった。危機感があったかどうかは覚えていないが、なんとなくその会社にいることも辛く、馴染めない生活だったので、その話を、私は素直に受け入れたように思う。

そして初めて、派遣会社に登録をすることにした。

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投げつけられたはさみ。

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