ボーダーの私が『普通』になるまでの物語⑤

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【21歳 閉鎖病棟】

その年の12月。

今度は別の病院に入院することになった。

そこは閉鎖病棟だった。

 

女子だけの病棟で基本的に鍵がかかっている。

外出はできない。

私は2・3人と同部屋だった。

 

摂食障害患者は看護室でごはんを食べ、毎食どのくらい食べたかをチェックされる。

そこは一度入ったら3か月間は出ることができなかった。

 

 

入院して数週間は環境の変化もあり何とか過ごすことができた。

ごはんはあまり食べることができない。

それが心地よくもある。


過食しない日が続くと、このまま治るのではないか。

もしかしたら一生過食しないでいられるのではないか。

もう自分は治ったのではないか。と思ったり、期待する自分がいる。

 

病院のごはんは必要な栄養と、必要なカロリーを計算されているというが完食するのは怖い。

とにかくお米の量が大量なのだ。



徐々に過食衝動がでてくる。

でも、食べるものは病院のごはんと少しのお菓子しかない。

過食衝動が起きても思いっきり食べることはできない。

できることといえば、病院食を一気にかきこむだけ。


看護室の中でごはんをかきこむ。

あきらかにいつもと違う自分。

獣みたい。

必要なカロリーと言われても完食してしまった恐怖が襲ってくる。

体内に全ての食べ物が吸収されていくような感覚。

 

すぐにトイレへ行き、水をできるだけ飲んでは左手を喉に突っ込んだ。

でもうまく吐けない。

 

怖い・・・。


自由に過食することも自由に吐くこともできない。

 

食べた恐怖と自由にならないイラつきを抑えることができない。


この感情を自分ではおさえることができず、看護師さんにぶつける。


病院で暴れると肩に筋肉注射を打たれ、ベッドに手足を拘束された。

 

身動きがとれない。

 

「しん」とした部屋。

 

ベッドに両手足を縛らている私だけがいる。


体は元気なのにただ一日中天井を見つめている毎日。

 

たまに様子を見に来る主治医。

 

いったい何日たったんだろう。

 

徐々に冷静さを取り戻していく。

 

孤独。

 

私は何のために生きているのか・・・。

 

じんわりとした涙が出てくる。

 

数日後、主治医の許可がおりると拘束から解放された。

 

また、入院生活の日常が繰り返される。

 

 

入院生活の朝はラジオ体操から始まる。

音楽に合わせてラジオ体操第一と第二を完璧にこなす。

 

入院生活での唯一の楽しみは朝に届く広告を見ることだった。

みんなでスイーツの広告を見て、どれが一番食べたいか「せーの」で指をさす。

食べられないけど、なぜかそれだけでワクワクした。

 

私はこの病院で3か月間の入院生活を3回繰り返した。

 オリンピックで北島康介が連覇を達成したとき私は2回目の入院をしていた。

テレビを見ながら身震いをしたのを覚えている。

 


その間には本当にいろんなことがあり、たくさんの人と出会った。

 

Hopeを吸ってる病院のドンみたいな女性

未成年の金髪の女の子

とても整った顔の人

見た目が男の子の女の子

なぜここにいるのかわからないような人

 

みんながみんな何かを抱え、一定の距離を保ちながら生活している。

 

一定の距離が保たれなくなると何かしらのトラブルが起こる。

 

みんな自分のことで必死だ。

 

 


私はここで一人の人に不思議な感情を抱いた。

とてもキレイでかっこいい人。

だけど、ここは女性病棟。

私が感じた感情が何なのかよくわからず、不安でたまらなくなった。

主治医の先生にそのことを話すと思いもよらない言葉が返ってきた。

 

「あなたレズなの?」

 

私はキレた・・・。

 

たぶん一番言われたくない部分をつつかれたから。

 

当時の私は男性と付き合ったこともなく、自分の気持ちが何なのかも、自分が何なのかもわからなかった。

 

わからないから不安だった。

 

もしかしたら私は女の人が好きなの?

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