「大切なことは、何をしたかではなく、何のためにそれをしたか」
かつて所属していた企業で、約10年に渡り取り組んできたことの一つが、 森林生態系保全プロジェクトの推進。
視察で訪れた現場サイトの各地は、どこも大変魅力的でした。 長野県黒姫、沖縄県やんばる、ガーナ、マレーシア、極東ロシア、 中国・雲南省。
それぞれの地域で出会った様々な人々。 NGO、政府関係者、村人、そして子どもたち。 決して甘くない現実の中で生きながら、未来への期待や夢を持つ人々。
その人々と実際に接してやりとりすることで、大事なことを学ぶことができました。 今この時を同じ土地で過ごしているという、とても貴重な時間。
生まれ育ちは違えども、共に自分の人生をより良く生きたいと願う人間。 我が子に愛情を注ぐ親。 そして、対等な命を持つ人間。 出会った人々のことを思い、自分なりに一所懸命活動に取り組みました。
伐られようとしていた森が守られ、そこに暮らす人も、生き物の営みが 持続的に残されていくようにと願いながら。 以前読んだ、高倉健さんの本。 (私は小学6年の時、映画「八甲田山」を観て以来、健さんの大ファン)
![](https://pic.storys.jp/t/1309/da83a3b4.jpeg)
『映画「南極物語」の撮影ロケで入った南極大陸。基地には、 小さなデイパック一個しか持って入れなかったんですが、 一冊の本を詰めていったんですね。
南極大陸での強烈な、本当に地獄のようなシーン。 判断を一つ間違えば生命に関わる、 生命を落としてもまったく不思議ではないという凄まじい場所が、 この地球上にはたくさんあるんです。
ニュージーランドのスコット基地に特別に入れてもらい、 この間に、恐ろしいブリザードも体験しました。 人間って本当に、あっけなく死ぬんだなと思いました。
小さな小さな雪上車の中に、八人の人間が立ったまま、 外を吹き荒れているブリザードを窓ガラス越しに眺めていた あの時のことを今も忘れられません。
南極に持っていったその本を、懐かしいなと思いながら、 ページを捲っていると、本文中に、赤で傍線が引っ張ってあるんです。
「苦しみつつなお働け。安住を求めるな。人生は巡礼である」 凄まじい言葉だと思います。 「人間の真価は棺を覆うた時、彼が何をなしたかではなくて、 何をなそうとしたかで決まるのだ」
「南極物語」は、1983年の封切りですから、随分前のことなんですが、 当時迷っていた自分が、こうした言葉に励まされ、勇気を貰っていたんだ と思います。
何をなしたかではなくて、何をなそうとしたか。 近頃もう一つ気になることがあります。 「何をしたかではなく、何のためにそれをしたか」 「何のためにしたか」。
そう問いかけることが、とっても大切な時が 来ているように思います。 どんな映画を撮るかではなく、何のためにその映画を撮るのか。 自分はこのことをとっても大切にしていきたいと思います。
そして、最後に、この言葉を。
「身についた能の、高い低いはしようがねえ、 けれども、低かろうと、高かろうと、精いっぱい 力いっぱい、ごまかしのない、嘘いつわりのない仕事をする、 おらあ、それだけを守り本尊にしてやって来た」 (山本周五郎「ちゃん」より)』
桜花の満開の美しさ、散り際の見事さ。
尊敬する健さんが言う、「何のために仕事をするか」が自分のこころに 強く響く。 心にしっかと留めながら、仕事に励んでいこう。
![](https://pic.storys.jp/t/1311/af75a69c.jpeg)
著者の岸 和幸さんに人生相談を申込む
著者の岸 和幸さんにメッセージを送る
メッセージを送る
著者の方だけが読めます