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追憶~ロボットと呼ばれた3歳児~(4/4)

Image by Olia Gozha

それからの1,2ヵ月は

以前の様な高まりはなかった。


変にお利口さんにするでもなく、

いつも通りの毎日を過ごしていた。


また次ももう少し、とか言われるのかな。


そんな気持ちもどこかにあった。


小さな期待と小さな諦めを抱えながら

ゆっくりと、確かにその日は近づいた。



この3年間でレントゲンという言葉も、

人間の骨格も、自分の悪い箇所も

知らぬ間に覚えていた。


いまでは連れられなくても部屋に行き、

言われなくても撮影の準備をする。


「きっと今日が最後」


そういわれたにもかかわらず、

レントゲン室の天井はくすんで見えた。


”あと何回撮れば終わるんだろう”


心の高まりより

不安が上回っていた。


いつも通り、母と二人で廊下で待機する。


細かいことはよくわからないが、

母はいつになくテンポよく話した。


しばらくすると名前が呼ばれた。


通いなれた部屋に、

いつもはいない先生たちもいた。


みんな優しい顔をしている。


「よく頑張ったね」


僕の最初の闘病生活が終わった。


丁寧に、僕の右足から器具が外される。

こいつとも今日でお別れ。


そこに寂しさはない。


その重さに、周りの視線に

慣れたとはいえやっぱり嫌だったんだ。


やっと解放された。


右足のおもりが外れ、

気持ちにも余裕が生まれると

一気に体が軽くなった。


斜め後ろから、鼻をすする音が聞こえる。


一緒に闘ってくれて、支えてくれて、

本当にありがとう。


ありがとうございます。


ひたすらに頭を下げて

病室を出ていく僕を

先生が呼び止めた。


「大変だったね、よく頑張った」


「いまの”ありがとう”って気持ちは

 これから会ういろんな人たちに返してあげてね」


「つらい思いをした分、君なら人にやさしくできるだろう?」



すぐには意味が分からなかったけど

胸が熱くなるのを感じた。


”うん、約束する! ありがとう!”


そういって僕は久しぶりに

自分の生の右足で一歩を踏んだ。

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Image by Jukka Aalho

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