将棋 プロ挫折後16
1 / 2 ページ
>栃木県、団体全国予選決勝戦
相手は宇高
杉本の相手は部長の振り飛車党
北里の相手は副部長の居飛車党
そして俺はエース対決
やはり俺の予感は正しかった。
相手はあの右四間使いだった。
この上ない最高の喜び。
最後の最後に残る一人、屈辱の負けを味わった相手と戦えるこの瞬間に喜びを感じた。
なぜって
勝って終わりにしてみせるからだ。
約束したんだ。
どんな相手でも絶対に勝つ。
そしてついに始まった。
お願いします。
北里と杉本は最後相居飛車と、相振りになった。
俺はゆっくり深呼吸を何度も行ってから、ゆっくり一手目を指した。
こいつとの戦いも決めていた。
特殊な戦法は使わず、ガチンコの実力対決
右四間 VS ノーマル四間飛車
振り飛車党のトップとしての振り飛車らしい戦い方で勝つ。
この時は二人に気を配る余裕はなかった。
俺は俺の戦いに全力を尽くした。
島田ときとは少し違い、俺は振った飛車の左は軽く捌く構えをして、銀はあげなかった。普通の美濃囲いのまま、相手は急戦できた。
島田戦の経験も踏まえ、ハナからカウンター狙いの玉頭戦は初めから考えていた。
がしかし意外にも相手の攻めは厳しかった。
俺の飛車は上手く捌けず働きを失い、相手も薄いが、俺の囲いは粉砕された。
クソ
最後の最後だってのに、ここまでか。
・・・負けてたまるか。
考えるのをやめた。
目を閉じて一度思考を停止させ、ゆっくり目を開き一度外の景色を見てから、盤面を見た。
「助かっていないように見えて、助かっている。」
これは一番プロの中で尊敬している大山先生の名言だ。
自分の玉を見たとき、一見誰でも受けて一旦手を戻すと考えそうな局面。
受けたら負ける。
受けずに、相手に駒を渡さない攻めをしなければ負ける。
逆に言えば、受けなければ詰まない!
そんな局面であることに気づいた。
その一瞬見えた、誰もが見えていなかった25飛。玉頭を攻めていた飛車を引いた。誰もがこの時悪手に見えていたがこの手が決めてになった。
相手は駒が入らないが故に寄せきれず、成銀をにじり寄ってきた。
そして起死回生の85飛。王手龍取りが決まった。飛車を動かしての角で抜き王手が決まった。
そうこの攻めがあったから、相手は他の手を考えなければいけなかった。つまり無理攻めだった。
「助かっていないように見えて、助かっている。」
のであった。
当然王手は無視できない、避ける。
そして相手の龍をとった瞬間。
完全に相手の攻めが切れた。
勝負が決まったのだ。
龍を取ったこともあり、相手を攻めるのに持ち駒は十分。だがこの寄せが肝心。下手に駒を与えればこちらが詰まされてしまう。
渡しても大丈夫な駒を考えつつ、必死までの手順を考えた。
よし、これで決まりだ!
読み切った。
そこから10数ての後相手玉必死。
自陣、王手がかからない。
「負けました。」
とうとう勝った。
これで雪辱は成した。
俺は今大会全焼し、約束を守った。
俺の役目は終わった。。。
あとは二人の勝負。
しかし
残酷なことに、局面は二人とも大劣勢だった。
間も無くして、北里投了。
著者の諒 酒井さんに人生相談を申込む
- 1
- 2