【フランスの森の中③】上裸でドレッドな妻子持ちヒッピーと、廃バスの中で成立した英国人カップルたちと、テントの中で「人間失格」を読みふける僕(19)と、時々犬連れてるおっさん。

おっさんのおんぼろカーに乗せられ、郊外都市の外れの駅から、どんどんさらに田舎町へ入っていく。いくつかの町を抜けたところで、とある森に入っていく…。初めて見るフランスの田舎の光景に目を輝かせる僕。田んぼではなく、麦畑とか、丘があって羊がいて、とかそういった風景。映画で見たことある…。おっさんはフランス語があまり通じないアジア少年にはあまり興味がなく、とはいえ少し優しい感じで無言の時間が流れる。おっさんは、髪は茶髪だけどだいぶはげてきてる、おそらく40歳代後半の風貌。当然、おなかも映画に出てくる人みたいにおおきく出ている。体は大きいが怖い感じではなく、どちらかというと、オタクのおっさんみたいな害のない感じだった。30分くらいだろうか。結構なスピードで走り、森の中をずんずん行ったところで脇道にそれていく、森の中で、18時ころだったと思うが、全く暗くない。時差かな？と思うくらいだ。そして森の中のとある場所で車を止め、降りるように促される。こんな所にお城が？？？

その時に見た光景は忘れられない。3匹の子豚という物語を読んだ人は多いと思うけど、まさにそれだ。末っ子が作るレンガのおうち。まさにそれが森の中の開けた広場みたいなところの中央にそびえたっていた。ただし、完成度は明らかに50％くらい。屋根もないし、窓もなかった。なんだこれ？？？しかも隣には、これもなんかの映画で見た…という感じの廃バスだった。怖っ。。。さらに奥には5つくらいのテントと、これも見たことあるけどさあ、的なモンゴルのゲルだった。本物よ。しかもめっちゃ大きい。なんでフランスにゲル？という突っ込みどころ満載の状況。

色んな事が呑み込めない自分に、おっさんは金髪で無精ひげを生やした青年を紹介してくれた。イギリス人だという。すぐわかった。意外とヨーロッパ人は服装で見分けがつくのだ。彼は、まじで典型的なチェックのネルシャツと半ズボンなのに靴下はかなりのハイソックスだった。こういうのフランス人は着ない（なぜかわからない）彼は当然英語が話せるので、ようやくいろいろ話を聞くことができた。（おっさんは英語が話せない）夏の間、いろんな人（主に外国人）が来て、ホストファミリーの家の建築を手伝っていること。もちろん、家がないのでみんな廃バスの中やテントの中で寝泊まりしていること、ホストはファミリーでゲルに住んでいること（おっさんはホストではない）、彼らは今買い物で外に出かけていること、など。ようやくいろいろと理解ができた。つまり、城というのは「マイホーム」のことで、それを手伝ってくれてという触れ込みを僕は中世のお城と勘違いしたのだ。フランス人でもマイホームを自分の城と言うんだな、と素直に思った。

とりあえず、仮名だけどイギリス青年はジョンとしておこう。ジョンはイギリスで暇なので、フランス語を勉強しつつ、WWOOFでフランス中を渡り歩いている、いわば僕の先輩のような人だった。ジョン曰く、とりあえず好きなテントに荷物置いて、ねぐらにしたら良いよ。ということだった。ジョンは最近は廃バスの中がお気に入りらしい。のぞいたら、座席もあったけど、結構キャンピングカーみたいに改造されてて、ソファとかあったり本棚に本が置いてあったりした。自分は適当なテントにバックパックを置き、おっさんが突如始めた焚火の近くのキャンプ椅子に座ることにした…。