【11】痛みと温度が同居した日 ~大すきで大きらいを知る~
すき。
ただ そのキモチを伝えるだけで良かったはずなのに
気づいたら それだけじゃ物足りなくなっていった。
それは呼吸とおなじ。
吐いた息の届く距離で 同じように言ってほしくて。
夕暮れ時 ひとり 家の電気をつけるのがイヤで
よく 散歩にでかけた。
一回り上だと 当たり前のように 仕事の帰りはおそかった。
お休みもほとんどなくて 楽しそうに疲れてた。
わたしの初めての恋は お友だちに見たモノとは違っていて
こんなはずじゃなかったって どこかで思ったりもして・・・・・
楽しそうなのを素直に喜べたのは はじめの内だけ。
彼は信頼の厚い人だったから 色々な人から相談を受けることがあって
そのせいで帰りが遅いこともあった。
彼は言わなかったけど 相手が女性であったことは 分かるモノ。
それを理解できるほど 大人にはなれなかったし
強がることも 弱さを隠せるほどの きれいごとを言える余裕も生まれなかった。
辛いトキに笑えていた自分が嘘のようだった。
イヤだ。
そうやって泣いた日が いくつもあった。
大すきな想いは 少しずつ 自分を守ることに変わっていき
傷つきたくなくて 彼のことを責めたし
キモチを確かめたくて わがままをいっぱい言ったし
彼のキモチが冷めていくのが分かっていながらも
わたしは平気で 彼から笑顔を奪ったのです。
吐く息が 白くなり始めた頃。
2人で飼いはじめたばかりの猫が風邪をひきました。
猫は風邪をひくと死んじゃうかもしれないって聞いて とても不安になった。
そんな時にやけに帰りも早く、病院につきそってくれたり
やさしくしてくれたりした彼が 横にいた。
そのやさしさにふれて わたしは大きらいになった。
大きらいにならないと いけなかった。
それは 猫も彼も どちらも失うのがとても怖かったから。
著者の中村 麻美さんに人生相談を申込む
著者の中村 麻美さんにメッセージを送る
メッセージを送る
著者の方だけが読めます