破いた名刺。(短編小説)
「郵便局好き?」
「郵便局好き。私、小説書いてて、よく投函しにいくし、手紙も書くから」
彼は、笑顔がくしゃくしゃになる。
友達が開いてくれた飲み会で、席がたまたま隣になった。
背は私より少し高い程度。私が155cmなので170cmあるかな?どうかなってところ。
筋肉質、なのか、スーツの二の腕がキツそう。だけど、太った感じがなくて、引き締まっていて、Mr.Childrenの櫻井さんに少し似ていた。
「可愛いね、かなみ、ちゃん?」
「かなみ、でいいよ」
返事をしながら、笑顔に胸が締め付けられる。優しいし、一緒にいるとふんわりした空気が纏っていく。
「好き、なんだよね?」
ドキッとした。え?
「郵便局、が。」
紛らわしい・・・告白のような言い方をして私の反応を試す。
「今度、一緒にご飯、食べに行こうよ」
「え、わたしと?」
「そう。なんか、俺、かなみちゃん気に入っちゃったな。その、なんか、照れているところと、男慣れしてないとこ」
男慣れ、とは?
「こいつさ、気をつけて。かなみちゃん、奥さんいるよ」
一瞬で、目が覚める、というか。
ふわふわした気持ちが、ストンと落ちた。
「え?!既婚者?」
「あー。でもね?聞いて。俺さ、奥さんとの間に子ども出来ないのよ。奥さん子ども要らないっていうのよ。だからさ、かなみちゃん、俺と」
既婚者に恋してもいいかどうかは 個人の自由があるけど
「酷い!」と怒ると
「怒らないでよ、俺、かなみちゃん、大好きになったからさ」
奥さんの前で同じこと言えるのか?!
「あー、こいつほんとに奥さんと冷戦だから、それは本当らしいけど、まあ、既婚者だからな。別れてから出直せよ」
と同僚にも言われる始末。
もらった名刺は、ビリビリに破って捨てる。
「かなみちゃん!俺、奥さんと別れてからくる」
・・・
その後、本当に離婚しそうになっていたので、もちろん止めた。ごめん、責任取れないし、私、また恋愛頑張ります。
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