「愛は国境を越える」タイで愛をみつけてやりまくった男

3・11の地震復興キャンペーンで「愛は国境を越える」というフレーズを目にした。
 
愛は国境を越える。
 
 メガネの長髪、リポビタンDが世界一似合わない男ジョンレノン。彼の「Imagine」の中でもたしかそんなことを言っていた気がする。
 愛とは自然にそこに生まれる抗えないものである。だから人間の作る国という境がいつまでも壁として存在することなどできるはずはない。

 先日行きつけの黒人ギャングのような美容師さんから「タイで愛に出会った男」の話を聞いた。
美容師というのは職業柄、ホストでもキャバ嬢でもないのに髪をきりながらそんな世間話をセコセコと聞かなければならない。だからそんな愛だの恋だの自由だの話はたんまりともっているのである。
 ある男は社員旅行でタイに行くことになった。当然夜は社会人の礼儀として、しっかりと国際交流をするために女の子とのMTGをセットしたらしい。
 その中に何ともその男好みのマブイ女の子がいた。一瞬でミーティングはヒートアップ!なんとか契約まで漕ぎ着けたい。男は全身全霊で挑んだ。最後は商談までしっかりと持っていき、よろしく固い握手を交わしたのだそうだ。
 その男はよっぽどそのクライアントが気に入ったのか四日間ホテルから出なかった。要はよろしくパコパコその子と飽きることなくやりまくったそうだ。男に取っての社員旅行はホテルの一室ですべてが完結した、パコパコツアーと成り果てていた。

実は僕も友達とタイに行ったことがある。
 先人達の知恵により「綺麗な女は男」という教えを胸に、調査団は調査のために苦渋の決断で日の丸を背負いながら夜の街へと吸い込まれた。
 実際キャバクラのようなゴーゴーバーに入ったのだが、皆さんとても綺麗でまだ見習いの僕には全員が女性にしか見えなかった。実際にそこにいた八割が元男だったのだが。
 友達のY君はさすが職人。職人気質が抑えられずに、女性達の一個一個のその下のマン穴が本物かどうか点検をせずにはいられなかった。Y君は一個一個まるでネジが入るのを確かめるように指を入れまくっていた。

「ほれ見たことか!こいつは偽物だ!お縄をちょうだいせい!」

とまるで偽物のルイヴィトンのバックを税関で探し当てたかのようにするどい目つきで横に座る女の子達を尋問していた。Y君は「位置が微妙におかしいし、ぬれ方も変だ」とまるでその道で何年も修行した人かのような名言を残すと、仕事終わりの濡れた人差し指をなめた。
 「舐めちゃうんだ!!」と口に出そうと思ったが、素人の僕がそんなことを言うのは無粋だと思い安いハイネケンをひたすら飲んでいた。
 だがそんな職人のY君の上を行くのがゴットアイU君であった。U君はもうその道の匠なので骨格を見ただけでわかるらしい。名画の鑑定士のごとく、ヒヨコの雄雌を見分けるように、そのゴットアイでばっさりと切り捨てていった。「男はどこかしらゴツイ」となんとも当たり前のことを言うあたりが、本質を捉えている匠ゆえのお言葉である。
 そんな技術大国日本の猛者二人を相手にタイの女性になった方々はさぞ困っているとお思いだろう。が決してそんなことはなく「そうよ、男だったの」とまるで火曜サスペンスの崖に立つ犯人のようにケロッと認めてくださるのだ。中には「よくわかったねえ」とほめてくださる方もいた。ちょっとした名探偵気分の三人は傍から見るとずいぶんと気持ち悪かったのだろう。
 話がずいぶんと脱線してしまったが、その男の中にあるそんな先人達の知恵や職人気質の島国日本の血は性欲という怪物の前にあっさりと倒された。なんでも鑑定団の中島誠之助のように「いい仕事してますね~」とまんまとだまされて、腰をフリフリしていた男。
 二日目には恋をした。三日目には愛が生まれた。帰国日には結婚しようと決心した。そう愛の超特急に乗った男は、しっかりと帰国日には終点「ねえ~結婚しようよ~、子供を作ろうよ~こうして世界は一つになるんだ~」(by毛皮のマリーズ/愛のテーマ)まで来ていたのである。そんな終点の舞台として選ばれた場所は空港。男は別れの涙をこらえているであろう彼女に、決意を口にしようとした。だが彼女の方が口を開くのは早かった。さすがムエタイの国タイ。先制攻撃は譲らない。

「実は話があるの」女が言う。

男は思う「俺もだ」

女は言う「もうあなたの前では何一つ隠し事はしたくないから」

男は思う「今更なんだ。何でも受け入れる」

女は言う「私男なの」

メガトン級である。さすがムエタイの国。先制攻撃は最大の攻撃力で相手の戦意を削いできた。僕だったらパコパコやりまくって、ピロートークみたいな生活を四日間を続けた相手が男だったらどんな顔をするだろう。「ゲッツ」なんていう寒いギャグを素人の僕が堂々とパクリ1000人の前で滑るよりも衝撃である。なんにせよ、結婚も子供も、もしかしたら世界を一つにすることもできない。毛皮のマリーズもそりゃあ解散してしまう衝撃の告白だった。

だが男は言う「男だろうが好きだ。君が好きなんだ」

決して、この男が男気があるとは思わない。基本的に男とはその場の雰囲気にすぐ酔える生き物である。酔った男は強い。もう自己陶酔で何も考えない。「空港」「別れ」「逆境」これだけで男は三分間ぐらいはダンディーナイスガイを演じられる。その三分間のダンディーナイスガイに男はなれるほどバカになったのである。
 「実は男だったんです。でも好きなんですよ!」と鼻息ぷんぷんに帰国後しゃべくりまわっていた男の「でも好きなんだ」はいつしか「でも男なんだよな」の否定的なニュアンスにかわり、美容室向けのたわいもない悩みとなった。
 国境というハードルは文明の発達により、低くなり多くの者が越えていった。だが性別というハードルはたとえなくなったとしても、飛ぶ者に勇気がない限りあってもなくても同じなのだ。

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