心友 【其の十ニ・杜の都】
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心友 【其の十三・無言の帰宅】
自身の仕事やプライベートがそれなりに充実してきていたせいもあり、再び新潟の地を訪れる時間を作ることはできなくなった。
訪れることができなくなったというのが正しいのか、訪れなかったというのが正しいのか…おそらく後者の方が当てはまる。
近いようで遠い新潟。薄情なものだとは思いつつ、クロイワのことは頭の片隅で小さく小さくなっていたことは否めない。
そんな折、クロイワが転院したという話を耳にした。新潟の病院で勧められた病院。場所は仙台。ただ、その事も転院したのだという事実だけをインプットするのみで、何のアクションも起こさなかった。
人生において後悔という言葉を使うことはめったにしないのだが、この「何もしなかった」ということだけは数少ない後悔の一つ。何がどう変わるということもないし、何も変えられなかったに違いないのだが、転院を知った後にせめて一度でも顔を出しておけばよかったと今でも思うのだ。
奇跡を信じて移り住んだであろう杜の都は、クロイワ親子にとっても、トクシマにとっても、そして自分にとっても奇跡どころか悲劇の地と化すことになる。
青天ならぬ霹靂の霹靂。
事実は小説より奇なり。嘘のような本当の話。
本当にこんなことってあるのか…今でもそう思わざるを得ない。
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