出張整体師はみた! ドクターのお客様

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お呼びいただく方の中には、お医者様もいらっしゃいます。
有名病院勤務の先生、大病院の院長先生、評判のクリニックを
経営されている先生といったお医者様の中でも特に
成功されている方々も・・・

その先生の病院やお知り合いに依頼されないのかな?と不思議に
思っておりましたが、お呼びいただいていた方々は、どうやら職場の
人間や知人だと変に気を使ってしまう。というのが正直な所のようです。

こちらは思わず身構えて緊張してしまいますが、大半の先生は、
男女、診療科問わず、物腰柔らかく穏やかで、こちらが更に
恐縮してしまいます。

その中でお一人だけ例外の先生がおりました。
クリニックを経営されているY先生でした。
初回より数回、奥様のみお受けになっていらしたのですが、
ある日、先生であるご主人も奥様の後にお受けになりたいとの事でした。

それまでもお支払のときにはいらして、足を組んでのけぞり気味に腰掛けて、
テーブルの上に音をたてて置いたりされていて、癖の強い方だなという印象
をもっておりました。

いつもは、お支払いのとき以外は別室にいらしたのですが、
その日は先にお受けになっている奥様の様子をご覧になって
いらっしゃいました。
コンディションや不調箇所をうかがってから施術に入り、
施術中に奥様に話しかけられたありきたりの世間話に、
お付き合いさせていただいておりました。

しばらくは先生もお聞きになっていらしたのですが、
突然表情を強ばらせて
「無理に話さなくてもいいからね!!」
と言い放ちました。奥様は
「別に嫌々話しているわけじゃぁ・・・」
と言い掛けましたが、あまりに急激に不機嫌になった先生の表情に、
次の言葉をつづけられずにおりました。
それから多くの残り時間は、妙な空気の中、ほぼ無言で奥様の施術を
終えさせていただきました。
いよいよ先生の順番でございます。

簡単に不調の様子とご希望を伺って(かなり面倒そうにさっとお答えに
なっていました。)様子見にかなり弱く一手目を入れた瞬間に
身を捩じらせて

「あいたたたた!もぅ~あんた力ありあまってんじゃないの!!!」
ご老人向けにも弱目であろう一手目だったのですが、想像の範疇を
越えた虚弱体質でいらっしゃるのか、虫の居所が悪く困らせようと
しているのか・・・
仕方なしに、それまでの最高齢のおじいちゃんに施術したときの、

ほぼ擦っているだけ
より更に弱めて、で対応させていただきました。
その後もぶつぶつおっしゃっておりましたので、途中で一回だけ止めるか
お聞きしましたが、続けろとの事で、そのまま時間まで行いました。

お支払いの段階で、ごねられるのではと心配しましたが、その心配は
幸いにも杞憂に終わりました。
威厳を保とうとされているのか、いつも以上にふんぞり返って
いらっしゃいましたが・・・

後に別の方にお聞きした所によると、その先生の科は、元々
お医者様の中ではステイタスがあまり高くなかったらしいのですが、
花粉症の増加である頃から急に繁盛(という表現が適当かは
難しいところですが)して、羽振りが良くなったようです。
この辺りの少々入り組んだ事情から、コンプレックスをうまく消化
できずに難しい方になってしまうケースがあるとの事でした。
一般的にステータスの高いとされているお医者様の中でも
色々あるのだなと

また一つ勉強させていただきました。

※ここまでお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
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大変恐縮ではございますが、どうぞ宜しくお願い致します。

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